桜舞う丘の上で2nd Season

りょう

第67話 満月の夜に

                 第67話  満月の夜に

1
翌日、僕は自分の部屋で何にも考えずボーッとしていた。文化祭二日目がメインと言っても過言ではなかったのにまさかの謹慎。こんな寂しい日があるのだろうか?
(でもおかしくないか…)
僕は相手に一切危害を加えてないのに、どうして謹慎をくらったのだろうか? もしかしてあの男が関係してるのかもしれない。
(はぁ…)
今更考えても仕方がないので、僕は目を閉じて二度寝をしようとしたその時、
ブー ブー
突然僕の携帯が鳴り響いた。こんな昼間に誰からだろうか?
「もしもし?」
『あ、結心君。元気にしてる?』
「何だマリナか…。文化祭の途中じゃないの?」
『何だとはなによ、せっかく結心君に頼み事があるから電話したのに』
「僕に?」
2
夕方、僕はまだ眠っている桜の部屋にこっそり入った。
「桜、起きて」
そして桜を呼ぶ。ぐっすり眠っているせいか、返事がない。
(仕方ない、運ぶしかないか…)
今は家に誰もいない。桜を連れて出るなら今しかない。
僕がマリナに頼まれた事、それは文化祭が終わった後、こっそり桜を連れて教室に来て欲しいという事だった。それ以外何も言わなかったので詳しくは分からないけど、どうやら僕と桜が来なければ始まらない何からしい。
「よっと」
桜を背負って階段を降りる。お互い着替えていないけど、時間もないしそのままでいっか。
(靴を履かせてっと)
本当は起こした方が楽なんだけれど、下手に起こすと可哀想なのでこのまま学校へと歩き出す。
が…。
「昼に誰かと電話しているのが聞こえたから怪しいと思ったけど、まさかこんな事をするなんてな結心」
家を出てすぐ、一番見つかってはいけない人物に見つかってしまった。
「秋久さん、僕は何を言われても止まりませんよ」
ただ不幸中の幸いだったのが、秋久さんが僕の背後に居る事。つまり、進行の邪魔にはならない。走って逃げることだってできる状況なのだ。
「お前、いつしかうちの娘を守りたいって言ったよな」
「はい」
「お前が今やろうとしていることは、決して桜を守れるようなことじゃないぞ。寧ろ悪化させるんだぞ」
正論だった。
「僕のやろうとしていることは、決して正しいことではないですそれでも…」
「僕は桜との思い出を優先にします!」
その後の秋久さんの返事を聞かずに、僕は走り出した。

「ったく、あのガキが…」
「あなた、あの子を結心さんに任せて大丈夫なんですか?」
「どうせ言ったって止まりやしない。やりたい様にやらせておけ」
「あなた…」
「ったく、一丁前に格好つけやがって…」
見上げるとそこには秋の夜空が広がっていた。
「今日は満月ですね」
「そうだな」

                      第68話  全員揃ってこそ へ続く

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