桜舞う丘の上で2nd Season

りょう

第66話 深夜十二時

           第66話 深夜十二時

1
前夜祭が終わって、帰宅したが桜はまだ帰ってきてなかった。そして時間が過ぎて行き、深夜十二時。あまりにも桜の帰りが遅い事を心配した夏海さんに頼まれて僕は、桜を探しに行った。
「いくらなんでも遅いなぁ」
思い当たる場所を回ってみるが、桜の姿は見当たらない。不安だけが広がっていく中で、偶然通りかかった公園で、男女が言い争っている声が聞こえた。
「離してよ!」
「いいだろ? 久しぶりに再会したんだからちょっとぐらい」
女性の声には勿論聞き覚えがあった。
「桜!」
僕は慌てて彼女の方へ向かう。
「ゆ、ゆーちゃん、どうしてここに?」
「誰だお前?」
桜と言い争っていた男の方が、こちらへ振り向く。
「僕は桜の彼氏だけど、何か?」
「あぁん、彼氏だって? お前が?」
相手と敵対しながら、桜の前に立つ。とにかく桜は守らなければならない。
「俺は桜の元彼だが、お前が今の彼氏だっけか? 笑わせるんじゃねえよ」
そう言うと男は突然殴りかかってきた。辛うじて僕は避ける。
「あの事件がなければ、俺達は今でも付き合ってられた。でもあいつが居たから…」
「あの事件?」
「お前には関係ない話だろ!」
正直喧嘩が苦手な僕は、防戦一方になってしまう。というか、さっきから桜の様子がおかしい。
「私のせい…私のせいなのよそれは…私のせいであの子を傷つけて…」
「桜?」
どうやら長時間この場にいるわけにもいかなそうなので、僕は一瞬の隙を見て桜の手を掴み、走り出した。
「あ、待て!」
とにかく今は逃げなきゃ。色々聞きたい事があるけど、今は桜を守らなきゃ。
2
うまくあいつを撒いた後、無事宮崎家に帰宅。
「お前らこんな遅くまで何道草食って…桜大丈夫か?」
秋久さんが僕に手を引かれている桜を心配する。さっきから桜は一言も喋ってないから心配だ。
「大…丈夫……」
そして繋いでいた手から、力が失われ、桜はそのまま倒れてしまった。
「さ、桜!」

桜はこの後高熱を出し、明日の文化祭に出る事は不可能。そして僕も…。
「謹慎ですか?」
学校に行くとすぐに先生に呼び出され、何と謹慎処分をくらった。今日は参加させてくれるらしいが、明日から一週間来れないらしい。
「昨日の喧嘩騒ぎを見てた人から電話があった。事実なんだろ?」
「はい…」
「だから……」
その後何を言ったか全く耳に入らなかった。どうしてこんな事になってしまったのだろうか? 僕はただ桜を守りたかったのに…。
(桜…)
その日の文化祭を僕は楽しめるはずもなかった。
                              第67話  満月の夜に へ続く

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