桜舞う丘の上で2nd Season

りょう

第62話 新入部員

                     第62話 新入部員

1
二学期が開始されてから数日後の部室。
「それで何でマリナが部室に居るの?」
「何でって決まってるでしょ。私も入るのよ結心君が入ってる部活に」
「え?」
「え?」
「は?」
「ふぇ?」
それぞれ声を漏らす。マリナが友人部に?どうして?
「折角結心君と再会出来たんだもん。なるべく一緒に居たいじゃない」
あ、そうですか…。
「という訳でよろしくお願いします」
「あぁ、うん」
思わぬタイミングでの新入部員に驚いて、中々言葉を発することができない僕達。
「という事で今日からお世話になる春崎マリナです。よろしくお願いします」
そう挨拶する彼女の笑顔は、どこか恐怖を覚えたのは僕だけだろうか? 彼女をよく知る僕だからこその恐怖は、いつか消える日がくるのだろうか?先が思いやられる。
2
その日の晩。
「ゆーちゃん、これはどういう事なの?」
当然のように桜に怒られました。
「そう言われても…」
「新学期からゆーちゃんにまとわりついた上に、友人部に入部なんて…」
「いや、部員が増えるのはいいことじゃないの?」
「そうだけど、どうも気に食わないのよ」
「どうして?」
「どうしても!」
「何て理不尽な」
はぁ、これはこれで困ったな…。僕的には彼女は大歓迎なんだけど…。部員が増えることは嬉しいし、マリナはマリナで人には話せないある事を抱えている。それを知っているのが僕だけ。だから、桜と同様近くにいてあげたいのが本心。でもそのマリナを桜が受け入れないのは、大きな問題でもある。僕にはどうにも出来ないのだろうか…。
「どうせ帰国子女だからロシア語でも話せて、皆にモテモテになるんだから、うちの部員には必要ないわよ」
「いや、桜それは流石に言い過ぎじゃないの?」
「いいのいいの、とにかく私は認めないから」
桜はそれだけを残すと、自分の部屋に戻っていってしまった。
(どうして…)
どうして桜はあんな言い方をするのだろうか?何が気に食わないのだろうか?確かに性格は少し変だけど、それでも彼女は…。
強く生きようとしているのに…。
通っていた学校が違っていたけど、僕は彼女が小学校でどんな事をされていたのか知っている。そこに彼女が一度嘘をついてまでロシナへ帰った理由がある。
彼女は国が違うという理由だけで、僕よりも小さい頃からイジメを受け続けていたんだ。本人は一切話さなかったけど…。
でも彼女は、もう一度日本に戻ってきた。それは彼女自身が、自分を変えようとしているからに違いない。それを遮る理由なんてどこにあるのだろうか?
(よし!)
ここは僕が何とかしてあげなければ。大切な親友の一人として、彼女を助けてあげなきゃ。
                             第63話 波乱の予兆 へ続く

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