この異世界は小説でできています
Page.15 空中戦と高熱
僕達と全く同じ作戦で挑んできたサキ。見た所彼女の方も魔法を使っていないようなので、どちらも自力で飛んだ事になる。つまりこの空中戦で玉を掴んだ方が、絶好のチャンスを掴むことができる。
「これは私がもらう!」
「あ!」
飛んできた時間差があったおかげで、僕の方が先に玉を手に入れることに成功。このまま地面に着地すればいいのだけど、サキも同じように飛んできたということは、
「きゃあ」
「痛った」
お互い正面衝突は避けられない。その衝撃で僕は玉を手放してしまう。
「好機!」
サキは何とその場から私を踏み台にしてさらなる跳躍を図ろうとする。
「そんなのさせない!」
僕は落下しながら、サキの服の袖を掴む。
「落ちる時は一緒よ」
「っ!」
ボールが遠くへ飛んで行ったまま、私とサキは地面へと落下。このまま落ちたら怪我をしかねないので、魔法で衝撃を少なくする。
「キリハ!」
「はい!」
僕は飛んで行った玉をキリハに一度任せる。サキが上にのしかかった状態で落ちたので、すぐに体を動かすことができない。
「離れなさいよ!」
「体の小さいあなたをここで抑えて、他の人に任せれば、こっちの勝ちよ」
「それを言ったら、エースのあなたがいないのだから、同等のレベルよ。いや、そうでもないかしらね」
と言ったと同時にキリハが僕と同じ原理で空を飛んでいるのを目視する。彼女はメイドでありながら、その身体能力は抜群で、もしかしたらユーリティア以上の能力を持っているかもしれない。
「あのメイドね。でもこっちだって同じくらいの子がいるもの」
「そうだとしても、残念だけどこの勝負私達の勝ちよ。何故なら」
動かせなであろうと油断していたサキの体をどかして立ち上がる。
「なっ、どこにそんな力が」
「お嬢様、受け取ってください!」
空中で見事に玉をキャッチしたキリハから、僕の元に玉が投げられる。それを僕はしっかりキャッチしたのち、
「さっき私を踏み台にしようとしたお返しよ」
サキを踏み台に使って、二度目の跳躍。そのままカゴへと飛んでいき、見事にゴールを収めた。
「ふぅ」
「やりましたねお嬢様」
かくしてサキとの玉入れでの対決は僕に軍配があがったのだった。
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
玉入れで結構疲れてしまった僕は、その後の午前中の残りの種目は応援する事に。未だ体調が回復していないというのも理由だけれど、こうして応援しているだけでも十分に楽しめた。
『以上で午前の部の種目は終了となります』
全部の種目が終わったところでアナウンスが流れて、お昼休憩の時間になる。僕達はキリハとユナとイスミの四人で昼食をとる事にした。
「いやぁ、それにしても圧巻だったよ二人とも」
「お姉様とキリハさんの連携プレイ、流石と言うべきでした」
話題は午前の玉入れの僕とキリハの連携プレイ。本来なら作戦は最初の時点で完成していたのだけれど、サキが同等に飛んでくる予想はできなかったので、咄嗟に作戦を変更する事になった。
「でもあれって、私の作戦にキリハが合わせてくれたから達成できたものだから、主役はキリハだと思うな私」
「そんな事言わないで下さいよお嬢様。お嬢様も立派な活躍でしたよ」
お互いを健闘しあう僕とキリハ。そもそもあの作戦は、キリハとユーリティアの信頼関係があるからこそ成せた作戦でもあるので、中身が男の自分になっても、彼女がそれをユーリティアとして受け入れてくれている事は感謝しきれない。
(だから僕の成果と言うよりはキリハの成果だと思うんだけど)
「とりあえず午前の部は、私達の団がトップで無事に折り返す事ができましたから、午後も頑張りましょう」
「うん、そうね」
と午後への気合を入れ直したところで、突然視界がくらみ始める。
「……あれ? 私……」
「お嬢様? どうかされ……って、顔真っ赤じゃないですか」
「もしかして熱が上がったんじゃ……」
「やっぱり無理なんかするからですよ。レオタードまで着て」
「いや……それを着させたのはあんたでしょ……」
今はジャージを羽織っているというのに、すごい寒気が僕を襲う。本来朝から高熱が出ていたのだから、午前中までよく体がもったものだと思う。おまけに玉入れでは激しい運動をしたのだから、普通ならとっくに倒れている。
「ごめん……キリハ……」
ついに体のバランスも保てなくなり、僕はその場で倒れてしまう。
(ああ、体育祭が……)
最後の最後まで自分の体調より、体育祭の事を考えていた僕はそのまま意識を失ったのだった。
「お嬢様!」
「お姉様!」
「ユーちゃん!」
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
小さい頃高熱で倒れた事がある。その時は両親共に仕事に出ていて、家で一人で何とかする事しか出来なかった。
(そうだ、僕はずっと一人で寂しかったんだ)
誰かに助けを求めようとも友達もろくにいない。ましてや近所に知り合いなんているわけがなかった。高熱を出した時も、僕は一人ぼっちだった。
『まあ、すごい熱。今私が看病してあげますわ』
でもそんな寂しさを和らげてくれたのが一人の少女だった。初めて出会った時もそうだったけど、彼女はいつも僕の事を心配してくれていて、熱で倒れた時も両親の代わりに看病してくれた。
『どうして……は僕にこんなに優しいの?』
『そんなの決まっていますわ。私はただあなたが……』
「っ!」
目が覚めた。そこは学校の保健室。外では歓声が聞こえる。どうやらあれからまだ時間はそんなに経過していないらしい。
「目が覚めましたか、お嬢様」
近くでは僕を看病してくれていたのか、キリハの姿があった。
「キリハ……私……」
「三十八度五分、お嬢様の今の熱です。朝測っていたらもっとあったかもしれません。その状態でお嬢様は午前中ずっと運動していました。そんな状況だったら、倒れても当然です」
「……そんなにあったんだ熱」
「私としたことが、やはり朝の時点で休ませるべきだったんです。こんなにも無理させて、私メイドとして失格です」
「そんな事ないわよキリハ。あなたは何一つ悪くない。私が無理を言っただけだから」
「お嬢様……」
無茶を通す事は間違っているとは言わない。でも自分の体に見合った判断をするべきだった。一ヶ月頑張ってきたプライドとかそんな事言って、本当は最初から無理だと分かっていたくせに僕は、皆に迷惑ばかりかけて……。
「私まだまだだなぁ……。天才とか言われているけど、まだまだだよ……。だって、皆に迷惑ばかりかけているし、それに」
キリハにはもっと迷惑かけてしまっている。こんな僕を、受け入れてもらって、こうして倒れた時にも看病してくれて。彼女には本当に辛い思いばかりさせてしまっている。
「ユーリティアが天才だったとしても、中の僕は迷惑ばかりかけているただの駄目人間だよ」
キリハ、本当にごめん。
「これは私がもらう!」
「あ!」
飛んできた時間差があったおかげで、僕の方が先に玉を手に入れることに成功。このまま地面に着地すればいいのだけど、サキも同じように飛んできたということは、
「きゃあ」
「痛った」
お互い正面衝突は避けられない。その衝撃で僕は玉を手放してしまう。
「好機!」
サキは何とその場から私を踏み台にしてさらなる跳躍を図ろうとする。
「そんなのさせない!」
僕は落下しながら、サキの服の袖を掴む。
「落ちる時は一緒よ」
「っ!」
ボールが遠くへ飛んで行ったまま、私とサキは地面へと落下。このまま落ちたら怪我をしかねないので、魔法で衝撃を少なくする。
「キリハ!」
「はい!」
僕は飛んで行った玉をキリハに一度任せる。サキが上にのしかかった状態で落ちたので、すぐに体を動かすことができない。
「離れなさいよ!」
「体の小さいあなたをここで抑えて、他の人に任せれば、こっちの勝ちよ」
「それを言ったら、エースのあなたがいないのだから、同等のレベルよ。いや、そうでもないかしらね」
と言ったと同時にキリハが僕と同じ原理で空を飛んでいるのを目視する。彼女はメイドでありながら、その身体能力は抜群で、もしかしたらユーリティア以上の能力を持っているかもしれない。
「あのメイドね。でもこっちだって同じくらいの子がいるもの」
「そうだとしても、残念だけどこの勝負私達の勝ちよ。何故なら」
動かせなであろうと油断していたサキの体をどかして立ち上がる。
「なっ、どこにそんな力が」
「お嬢様、受け取ってください!」
空中で見事に玉をキャッチしたキリハから、僕の元に玉が投げられる。それを僕はしっかりキャッチしたのち、
「さっき私を踏み台にしようとしたお返しよ」
サキを踏み台に使って、二度目の跳躍。そのままカゴへと飛んでいき、見事にゴールを収めた。
「ふぅ」
「やりましたねお嬢様」
かくしてサキとの玉入れでの対決は僕に軍配があがったのだった。
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
玉入れで結構疲れてしまった僕は、その後の午前中の残りの種目は応援する事に。未だ体調が回復していないというのも理由だけれど、こうして応援しているだけでも十分に楽しめた。
『以上で午前の部の種目は終了となります』
全部の種目が終わったところでアナウンスが流れて、お昼休憩の時間になる。僕達はキリハとユナとイスミの四人で昼食をとる事にした。
「いやぁ、それにしても圧巻だったよ二人とも」
「お姉様とキリハさんの連携プレイ、流石と言うべきでした」
話題は午前の玉入れの僕とキリハの連携プレイ。本来なら作戦は最初の時点で完成していたのだけれど、サキが同等に飛んでくる予想はできなかったので、咄嗟に作戦を変更する事になった。
「でもあれって、私の作戦にキリハが合わせてくれたから達成できたものだから、主役はキリハだと思うな私」
「そんな事言わないで下さいよお嬢様。お嬢様も立派な活躍でしたよ」
お互いを健闘しあう僕とキリハ。そもそもあの作戦は、キリハとユーリティアの信頼関係があるからこそ成せた作戦でもあるので、中身が男の自分になっても、彼女がそれをユーリティアとして受け入れてくれている事は感謝しきれない。
(だから僕の成果と言うよりはキリハの成果だと思うんだけど)
「とりあえず午前の部は、私達の団がトップで無事に折り返す事ができましたから、午後も頑張りましょう」
「うん、そうね」
と午後への気合を入れ直したところで、突然視界がくらみ始める。
「……あれ? 私……」
「お嬢様? どうかされ……って、顔真っ赤じゃないですか」
「もしかして熱が上がったんじゃ……」
「やっぱり無理なんかするからですよ。レオタードまで着て」
「いや……それを着させたのはあんたでしょ……」
今はジャージを羽織っているというのに、すごい寒気が僕を襲う。本来朝から高熱が出ていたのだから、午前中までよく体がもったものだと思う。おまけに玉入れでは激しい運動をしたのだから、普通ならとっくに倒れている。
「ごめん……キリハ……」
ついに体のバランスも保てなくなり、僕はその場で倒れてしまう。
(ああ、体育祭が……)
最後の最後まで自分の体調より、体育祭の事を考えていた僕はそのまま意識を失ったのだった。
「お嬢様!」
「お姉様!」
「ユーちゃん!」
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
小さい頃高熱で倒れた事がある。その時は両親共に仕事に出ていて、家で一人で何とかする事しか出来なかった。
(そうだ、僕はずっと一人で寂しかったんだ)
誰かに助けを求めようとも友達もろくにいない。ましてや近所に知り合いなんているわけがなかった。高熱を出した時も、僕は一人ぼっちだった。
『まあ、すごい熱。今私が看病してあげますわ』
でもそんな寂しさを和らげてくれたのが一人の少女だった。初めて出会った時もそうだったけど、彼女はいつも僕の事を心配してくれていて、熱で倒れた時も両親の代わりに看病してくれた。
『どうして……は僕にこんなに優しいの?』
『そんなの決まっていますわ。私はただあなたが……』
「っ!」
目が覚めた。そこは学校の保健室。外では歓声が聞こえる。どうやらあれからまだ時間はそんなに経過していないらしい。
「目が覚めましたか、お嬢様」
近くでは僕を看病してくれていたのか、キリハの姿があった。
「キリハ……私……」
「三十八度五分、お嬢様の今の熱です。朝測っていたらもっとあったかもしれません。その状態でお嬢様は午前中ずっと運動していました。そんな状況だったら、倒れても当然です」
「……そんなにあったんだ熱」
「私としたことが、やはり朝の時点で休ませるべきだったんです。こんなにも無理させて、私メイドとして失格です」
「そんな事ないわよキリハ。あなたは何一つ悪くない。私が無理を言っただけだから」
「お嬢様……」
無茶を通す事は間違っているとは言わない。でも自分の体に見合った判断をするべきだった。一ヶ月頑張ってきたプライドとかそんな事言って、本当は最初から無理だと分かっていたくせに僕は、皆に迷惑ばかりかけて……。
「私まだまだだなぁ……。天才とか言われているけど、まだまだだよ……。だって、皆に迷惑ばかりかけているし、それに」
キリハにはもっと迷惑かけてしまっている。こんな僕を、受け入れてもらって、こうして倒れた時にも看病してくれて。彼女には本当に辛い思いばかりさせてしまっている。
「ユーリティアが天才だったとしても、中の僕は迷惑ばかりかけているただの駄目人間だよ」
キリハ、本当にごめん。
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