この異世界は小説でできています
Page.10 一目でブラコンだって分かったよ
夕暮れ時の学校で出会った女装系男子は、慌てていたけど何か事情がありそうなので同じ身として話を聞いてあげる事にした。
「とりあえずそういうのに目覚めたわけではないのね」
「決してそういうのじゃないんです!」
彼はユーリティアの一個下に値する後輩で、ロトという名前らしい。
「それでどうして、こんな放課後に女装なんかに目が覚めたの?」
「その聞き方だと僕が自ら女装したみたいだけど、違うんです。これは姉がやった事で……」
「姉?」
そう言われてみると、誰かに似ているような気がした。つい最近どこかで会ったような、そんな気がする。
「ロトー、どこに行ったのぉ? もっと可愛い姿をお姉ちゃんに見せなさいよ」
そう考えている間に、遠くから聞いた事のある声が聞こえてくる。
(この声、まさか?)
「ね、ねえロト君。もしかしてあなたのお姉ちゃんって……」
「あ、こんな所にいた。探したの……」
声の主、サキと鉢合わせる。いや、まさかとは思ったけど彼女が弟に女装をさせる姉だとは……。
「ちょ、ちょ、ちょ。何であなたがここに居るのよユーリティア」
「あんたこそ、まさかそんな趣味があるなんて意外だわ」
「こ、こ、こ、これは、その、違うのよ」
「姉ちゃん、この人と知り合いなの?」
「し、知り合いじゃないわよ! 誰がこんな……」
「でも名前で……」
「と、とにかく帰るわよ!」
よほど見られたくない姿だったのか、僕の存在すら否定して、そそくさとロトを連れてその場から去ろうとする。
「あ、ちょっと待ってサキ! 忘れ物」
だけどロトが忘れ物をしている事に気がつき、投げてあげる。それは綺麗にロトの頭にかぶさった。
「ば、馬鹿! いらないわよこんなもの」
「でもそういう趣味があるなら必要でしょ?」
「っ! 覚えてなさい!」
僕が投げたカツラをそのままロトのかぶせたまま、サキはその場をそそくさと去っていった。
「否定はしないんだ」
僕のライバルはとんでもない趣味をお持ちの方のようだ(人の事は言えないけど)。
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
今度こそ家へと帰宅した僕は、その足でキリハがいる場所であろう所へとやって来ていた。
「あ、おかえりなさいませお嬢様」
「ただいまキリハ。これ私が頼んでおいたやつ?」
「はい! ばっちりですよ」
今朝も言っていたけど、僕は一ヶ月後に控えている体育祭の練習用兼、魔法などの練習用にも使えるちょっとした運動場。規模的にはそんなに大きくないのだけれど、一週間足らずでこれを作り上げるのはある意味すごいと思う。
「これで心置きなく特訓ができるわ」
「お嬢様の体は元々能力が高いので、そこまで心配しなくても大丈夫だと思いますが」
「たとえ能力が高くても、その体に自分自身が追いつかないと駄目なのよ。今日の決闘の時もそう思ったの」
「そう言いながらも、私が教えた護身用の魔法を一発で成功させたじゃないですか。その点は私も褒めますよ」
「そういえばなんで護身用に、上級魔法なんて覚えさせたのよ」
「覚えておけば、確実に護身できるかと思いまして」
「確かに護身にはなったけど」
サキ曰く、並大抵の人間では使えないというのだから、恐らく大体の人からは身を守れるかもしれないけど、こんなの使われたら相手は死んだりしないかと心配にもなる。
「それにこのくらいの魔法はまだ序の口ですから。お嬢様はもっと上の魔法を使う事ができます」
「あれよりもっと上……」
あれですら相当なものだというのに、その上があるって何かすごく怖いんですけど。
「あ、お嬢様、練習するのは明日からにしませんか」
「え? どうしてよ」
「実は今日お嬢様にお客様が来ていらっしゃるので、そちらの方を優先した方がいいかと」
「お客様?」
この二週間近く、そんな人なんて一度も来たことがないんだけど、一体どんなお客様が来ているのだろうか。
「お姉様!」
お客様はイスミでした(涙)。
「何かそんな予感がしていたから、私今すごく悔しいんだけど」
「何を仰っているんですかお嬢様。イスミ様もご立派なご友人ですよ」
「お姉様お呼ばわりされる様な子と、友人になりたくないわよ!」
お客様と聞いて一瞬でもその可能性を考えてしまった自分が馬鹿だと思いたい。もう二度と会いたくなかったのにどうしてこんなタイミングで。
「イスミお嬢様とお嬢様がご結婚なされると聞いたので、しばらくの間我が家に住んでもらうことにしたんです」
「それもはやお客様の領域越えているわよね?! あと結婚するなんて私一度も言ってないわよ!」
「そんな勿体ぶらないでくださいよお姉様。私達は共に未来を誓い合った仲じゃないですか」
「いつ、どこで私がそんな事をしたのよ!」
「この前の温泉の時に、私達は裸の付き合いをしたじゃないですか。それだけでも充分ですよ」
「あれはあんたが一方的にやって来ただけでしょうが! あとどうしてキリハはそんな嘘を信じたのよ」
「お嬢様にようやく結婚相手ができて、長年付き添ったメイドとしては涙ぐましいものがありまして」
「相手は女性よ!」
「それでもいいかと」
「よくない!」
どうやら聞くところによると、本当にイスミはしばらくここに住み着くらしく、私達の学校にも通うらしい(何と同じ年らしい)。学校でこんな事されたら、もう僕はどうすればいいのやら。
「楽しみですねお姉様」
「全然楽しくないわよ!」
「とりあえずそういうのに目覚めたわけではないのね」
「決してそういうのじゃないんです!」
彼はユーリティアの一個下に値する後輩で、ロトという名前らしい。
「それでどうして、こんな放課後に女装なんかに目が覚めたの?」
「その聞き方だと僕が自ら女装したみたいだけど、違うんです。これは姉がやった事で……」
「姉?」
そう言われてみると、誰かに似ているような気がした。つい最近どこかで会ったような、そんな気がする。
「ロトー、どこに行ったのぉ? もっと可愛い姿をお姉ちゃんに見せなさいよ」
そう考えている間に、遠くから聞いた事のある声が聞こえてくる。
(この声、まさか?)
「ね、ねえロト君。もしかしてあなたのお姉ちゃんって……」
「あ、こんな所にいた。探したの……」
声の主、サキと鉢合わせる。いや、まさかとは思ったけど彼女が弟に女装をさせる姉だとは……。
「ちょ、ちょ、ちょ。何であなたがここに居るのよユーリティア」
「あんたこそ、まさかそんな趣味があるなんて意外だわ」
「こ、こ、こ、これは、その、違うのよ」
「姉ちゃん、この人と知り合いなの?」
「し、知り合いじゃないわよ! 誰がこんな……」
「でも名前で……」
「と、とにかく帰るわよ!」
よほど見られたくない姿だったのか、僕の存在すら否定して、そそくさとロトを連れてその場から去ろうとする。
「あ、ちょっと待ってサキ! 忘れ物」
だけどロトが忘れ物をしている事に気がつき、投げてあげる。それは綺麗にロトの頭にかぶさった。
「ば、馬鹿! いらないわよこんなもの」
「でもそういう趣味があるなら必要でしょ?」
「っ! 覚えてなさい!」
僕が投げたカツラをそのままロトのかぶせたまま、サキはその場をそそくさと去っていった。
「否定はしないんだ」
僕のライバルはとんでもない趣味をお持ちの方のようだ(人の事は言えないけど)。
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
今度こそ家へと帰宅した僕は、その足でキリハがいる場所であろう所へとやって来ていた。
「あ、おかえりなさいませお嬢様」
「ただいまキリハ。これ私が頼んでおいたやつ?」
「はい! ばっちりですよ」
今朝も言っていたけど、僕は一ヶ月後に控えている体育祭の練習用兼、魔法などの練習用にも使えるちょっとした運動場。規模的にはそんなに大きくないのだけれど、一週間足らずでこれを作り上げるのはある意味すごいと思う。
「これで心置きなく特訓ができるわ」
「お嬢様の体は元々能力が高いので、そこまで心配しなくても大丈夫だと思いますが」
「たとえ能力が高くても、その体に自分自身が追いつかないと駄目なのよ。今日の決闘の時もそう思ったの」
「そう言いながらも、私が教えた護身用の魔法を一発で成功させたじゃないですか。その点は私も褒めますよ」
「そういえばなんで護身用に、上級魔法なんて覚えさせたのよ」
「覚えておけば、確実に護身できるかと思いまして」
「確かに護身にはなったけど」
サキ曰く、並大抵の人間では使えないというのだから、恐らく大体の人からは身を守れるかもしれないけど、こんなの使われたら相手は死んだりしないかと心配にもなる。
「それにこのくらいの魔法はまだ序の口ですから。お嬢様はもっと上の魔法を使う事ができます」
「あれよりもっと上……」
あれですら相当なものだというのに、その上があるって何かすごく怖いんですけど。
「あ、お嬢様、練習するのは明日からにしませんか」
「え? どうしてよ」
「実は今日お嬢様にお客様が来ていらっしゃるので、そちらの方を優先した方がいいかと」
「お客様?」
この二週間近く、そんな人なんて一度も来たことがないんだけど、一体どんなお客様が来ているのだろうか。
「お姉様!」
お客様はイスミでした(涙)。
「何かそんな予感がしていたから、私今すごく悔しいんだけど」
「何を仰っているんですかお嬢様。イスミ様もご立派なご友人ですよ」
「お姉様お呼ばわりされる様な子と、友人になりたくないわよ!」
お客様と聞いて一瞬でもその可能性を考えてしまった自分が馬鹿だと思いたい。もう二度と会いたくなかったのにどうしてこんなタイミングで。
「イスミお嬢様とお嬢様がご結婚なされると聞いたので、しばらくの間我が家に住んでもらうことにしたんです」
「それもはやお客様の領域越えているわよね?! あと結婚するなんて私一度も言ってないわよ!」
「そんな勿体ぶらないでくださいよお姉様。私達は共に未来を誓い合った仲じゃないですか」
「いつ、どこで私がそんな事をしたのよ!」
「この前の温泉の時に、私達は裸の付き合いをしたじゃないですか。それだけでも充分ですよ」
「あれはあんたが一方的にやって来ただけでしょうが! あとどうしてキリハはそんな嘘を信じたのよ」
「お嬢様にようやく結婚相手ができて、長年付き添ったメイドとしては涙ぐましいものがありまして」
「相手は女性よ!」
「それでもいいかと」
「よくない!」
どうやら聞くところによると、本当にイスミはしばらくここに住み着くらしく、私達の学校にも通うらしい(何と同じ年らしい)。学校でこんな事されたら、もう僕はどうすればいいのやら。
「楽しみですねお姉様」
「全然楽しくないわよ!」
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