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些稚絃羽

指先のV

すべてこの手にあるような
浮かぶ心が未来のような
そんな風に思っていたんだ
聳える壁の硬さも知らないで

指鳴らせばかかる魔法のような
雪溶ければ迎える春のような
そんなものだと思っていたんだ
取り巻く世界の硬さも知らないで

当たり前の日々はなく 明日の行方さえ分からない
掌の無力さに気付いていたのに
見ない振りして翳してたのは 歪な形のVサイン


少しずつ、世界というものを知る度に
少しずつ、僕というものを知っていく
それは僕の目を少しだけ 霞ませていくけれど


力がないことを恐れるなと
言葉の稚拙さを嘆くなと
それでも立てと聞こえたんだ
目指す光が胸にある限り

同じ色した日々もなく 扉の先さえ見えなくても
掌の温もりに気付いたから
突き出した指先に宿したのは 歪な形のVサイン

  

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