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些稚絃羽

揺れる紫苑、哀の痕

瞼の裏に残る明滅が
願いに影をつくるから
暗がりの星が滲みだす

宵の淵 腰かけて
窓辺の雨にあの日を思い出す
打ち付ける雨粒の数は
その笑顔をどれほど濡らしただろう

土を這う流れは誰の祈り
地の身を削る 哀の痕

伏せる瞳が寂しくて
追いかける手は掠め取られるから
築いてきた刻の色だけ
瞼を焼くほど鮮やかになる

隙間空く部屋の黒ずむ闇に
呑み込まれないのは声があるから
あの流れに光が注いだら
少しだけ身を任せて眠ろう

夢の中で逢えたなら
きっと愛の跡に代わるから

季節外れの紫苑が咲くそばで

  

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