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些稚絃羽

ちぐ・はぐ

どうして、って君が聞くから
好きだから、って答えたら
どうして、って君が聞くから
好きだから、ってやっぱり答えた

答えが欲しい君と他に答えを知らない僕
僕らはいつだって掛け違えて
まるで君のシャツのボタンみたいだ
それでも君が無邪気に笑っているから
だから笑わずにはいられないんだ


寂しくない、って君が言うから
そうだね、って応えたら
寂しいの、って君が言うから
そうだね、って応えたんだ

認められない君と認めてあげたい僕
僕らはいつだっていたちごっこで
まるで君の描いては潰すキャンバスみたいだ
それでも君が涙声で背中に触れるから
だからただそんな場所になりたいんだ


赤が似合うよ、って君が言うから
白がいいんだ、って答えたら
青でもいいね、って君が言うから
黒がいいんだ、って答えたんだ

色を足したがる君と色を無くしたがる僕
僕らはいつだって混ざり合えなくて
まるで君の絵の具を散らした頬みたいだ
それでも君が平気だよって強く拭うから
だからその頬を包んであげたいんだ


あと少しなのに、って君が言うから
手伝おうか、って応えたら
そうじゃないのに、って君が言うから
ごめんね、って応えたんだ

小さくて届かない君と大きくて遠すぎる僕
僕らはいつだってちぐはぐで
まるで君のぶかぶかのブーツみたいだ
それでも君がうんと空に手を伸ばすから
だからその手をそっと握ってみるんだ



好きだよ、ってまた伝えたら
本当に、って君が聞くから
好きだよ、って繰り返したら
わたしも、って君が言ったんだ
     

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