Opening Is Empty

些稚絃羽

ユビキリ、君と

柔く絡めた小指の先から
約束以上の未来が繋がればいいのに



常識外れの夜中の電話
3コールだけと心に決めて
鳴った電子音  2回半
途切れて聞こえたか細い声
わざと出した投げやりな声は
鳴った胸の音を誤魔化すためで

「声が聞きたかったんだよ」
自分の思いを囁かれて
目眩がしそうな夜明け前
期待、しそうになるから
バカ、としか返してやれなくて


他より少し近いだけの
フツウの距離が歯痒くて
欲張った後に開きそうな
脆い距離に歯噛みする


寝息を立てる無防備な頬を
撫でかけて、軽く小突いてやれば
不満げな弱い拳が飛んでくる
握って止めたその小ささに
柄にもなく抱き締めたくなったりして

出すタイミングを探してた
背中に隠した2枚のチケット
じゃれあいの延長で突き付けて
丸い目がゆるりと細まるのを
背けた横目で見届けた

あの電話の星の話
忘れる訳がないだろう
あれで笑っていられるなら
夜じゃなくても見せてやる
その場所まで欲しいなんて
そこまでの我儘言わないから


約束、と差し出された小指に
自分のそれを柔く絡める
壊さないように、包み込むように
明確な気持ちを伝えないままで
それでももう少しここに居させて
そんな約束以上の未来を願って
淡い力で引き寄せた

  

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