Cat's World

りょう

After World ③

part3
「え? じゃあ今ムムは王都で働いているわけ?」
「はい。長く続いた戦争で傷ついた猫の為に自分ができる事をしたいなって」
「そうなんだ」
確かにそれはいい事かもしれない。戦争で沢山の猫の為に自ら働こうとするのは、この世界の住人ならして当たり前の事だろう。
「私少しずつ人間だった頃の事を思い出してきたんです。その度に自分がどれだけ愚かだったのか分かってしまい、せめてこの世界ではしっかりしたいかなって」
「ふーん、そうなんだ」
「私何か間違ってますかね?」
「全然間違ってねえよ。お前の考えは正しいと思う」
「本当ですか?」
「ああ」
彼女の真剣な目を見て俺はそう思った。彼女は自分自身を変えようと努力している。これを俺が止める理由がない。
「お前結構変わったな」
「へ? 変わったって?」
「初めて会った頃はあんなにおどおどしていたのに、今はしっかりしてるじゃねえか」
「そうですかね?」
「ああ」
恥ずかしいのか頬を赤らめるムム。何気に可愛い仕草するじゃねえか。
「あ、あともう一つミケさんに頼みたい事があるんですけど」
「俺に頼み?」
「はい。チルさんの事なんですが…」
「チルの事?」

散歩から戻ると、忘年会は続いていた。相変わらずチルとユキは俺の事で盛り上がっている。それについて行けないクポは、ボーッと椅子に座っていた。
「あ、おかえり」
「ただいま」
ムムは二匹の反対側の席につくが、俺は座らずにチルの方へと向かった。
「なあチル、ちょっと話があるんだがいいか?」
「別にいいけど、どうしたの?」
「説明は後でする」
さっきムムから聞いた話を改めて彼女に聞かなければならない。場合によっては怒らなければならない事だから。
「ムムとユキは適当な時間になったら後片付けしておいてくれないか?」
「ん? そんなに長い話をするの?」
「ああ。多分かなり時間がかかると思う」
「分かった」
二匹にそれだけ言い残すと、俺はチルを引き連れて久々に自分の部屋に向かった。

「それで話って何?」
部屋に入るなり、お互い適当な所に座ると、チルから話を切り出してきた。俺は彼女の質問に対して、前置きもせずさっきムムから聞いた話を尋ねた。
「お前クポを他の家に預けようとしているのは本当か?」
「え? 何でそれをミケが知ってるの?」
「ムムから聞いた。それは本当なのか?」
「うん。本当だよ」
「どうしてそんな事を?」
「そんなの決まってるじゃない。私はこれからお父さんとお母さんの元で暮らす事にしたからよ」
「へ?」
                                                     part4 へ続く

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