Cat's World

りょう

第36匹 ミケvsエルーシャ

     第36匹 ミケvsエルーシャ

1
何かこの場を打開できる方法は…。
俺は今の状況を冷静に分析した。今俺とチルは手足を縛られてるから使える事ができない。喉元には剣が突きつけられている。下手に動いたら殺されるだろう。
唯一使えるのが突きつけられている剣…。
(そうだ、一つだけ打開できる方法があった)
俺は一旦両腕を下に下げて、思いっきり上に上げた。
「なっ…!」
エルーシャが驚きの声をあげる。剣を利用して、うまく縛っている物を切り離す事に成功したのだ。
「ミケ!」
チルも声を上げる。
両手が自由になった俺は、近くに落ちていた剣を握り、立ち上がった。
「貴様、私に適うとでも思っているのか」
「そんなのは分からねえ。ただ俺は、大切な者を守るために今剣を握った。ただそれだけだ」
剣を構え、エルーシャと対峙する。勝てる自身があるとは言えない。ただ俺は、チルの為、家族の為に戦う。この先にどんな結末が待ち構えていようと!
「行くぞ!」
2
剣を両手に握りしめ、エルーシャの所へかけて行き、まずは一振り。当然避けられる。
「私はブラックキャット王国の女王よ。あなたみたいな普通の三毛猫が適うはずがないわ」
横薙ぎがきたのでしゃがんで避け、後転をして一旦距離を取る。
「あんたが女王なのは知っている。俺が普通の三毛猫だって事も知っている。だが、俺には仲間がいる。たとえそれが力とならなくても、仲間の想いは俺に伝わってくるんだよ!」
再び剣を振るが、今度は受け止められつばぜり合いになる。
「そんな馬鹿馬鹿しい力で、この私に傷一つつけられないわよ!」
つばぜり合いに負け弾かれる。
しまった…。
「ミケ、危ない!」
チャンスとばかりにエルーシャは突きを放つ。弾かれた反動で何もできない俺は、それを防御できずに剣が腹部に刺さる。
「ぐはっ」
「あら、早くも決着かしら」
「ミケー!」
今度はリック王の声が響く。
やっぱり駄目なのか俺は…。意識が遠のき始める。やっぱり俺は家族を、仲間も誰も守れないのか…。
(チル、ごめん…)
俺は意識を失った。
3
『なあチル、一つ聞いていいか?』
『何?』
この世界に来て少し経った頃、俺はチルにこんな事を聞いてみた。
『お前はこの世界が好きか?』
『何よいきなり』
『いや、俺はこの世界に来たばかりだからさ、いい所なのか気になってさ』
『ふーん』
チルは少し考えた後、こんな答えを出した。
『好きじゃないかな』
『え?』
その答えはあまりに予想外だったので、俺は思わず驚いてしまった。
『だってほぼ毎日のようにどこかで、争いが起こってるんでしょ?そんな世界好きになれるはずがないじゃない』
『確かにな…』
俺もそんな世界は嫌いだ。毎日のように争って、その度に誰かが命を落としている。そんな世界が好きになれるはずがない。
『でも争いがない世界は、私は好きかな』
『そうだな』
だれだって争いがないそんな世界を望んでいる。でもそんなのが叶うはずがない。争いなんて無くなるはずがないんだから…。
(それでもチルは、争いが無くなるのを望んでいる。だったら俺はそれを…)
手助けすればいいんじゃないか?今のこの状況は、世界を変えれるチャンスではないか。だったら諦めてる場合じゃない。
「うぐっ…」
「なっ! 意識を取り戻した?」
「ミケ!」
俺は残り少ない力で、何とか意識を取り戻す事に成功した。
                第37匹 Change the World へ続く

コメント

コメントを書く

「その他」の人気作品

書籍化作品