Cat's World

りょう

第33匹 本当の家族

                 第33匹 本当の家族

1
そのままチルを追ってニャンタ城へ。本来なら王室なんて入れてもらえないのだが、チルを追ってきたと言うと、すんなり通してくれた。
(どうやらあちらもまた、何かを感じ取ったんだな)
最初はまさか二人が俺の両親だとは微塵も思っていなかった。でもこれを渡された時、
「どうかチルを守ってやってくれ」
彼らが何かしら隠している事に気付いた。そして、ユキやチルが同様の物を持っていると知った時、俺の頭には何かがよぎった。自分が夢で見てきた記憶の数々。それらと今回の事を照らし合わせた時、一つの答えが出てきた。それが今回の話。チルがまさか妹だったのは流石に驚きを隠せなかったけど、同時に守ってやりたいと思った。それは十五年前に何もできなかった自分への償いでもあった。
俺は本当の家族を守りたかったんだ。
「やっと着いた」
そんな事考えていると王室に到着。チルは居ないから、恐らく中に居るだろ。
「よし、入るか」
2
で、入るなり
「説明してよ!」
チルの怒声が聞こえた。少し間に合わなかったか…。それでも俺は、暴れているチルを止める。ちなみにリックとリーシャは一切動いていない。
「チル、やめろよ」
「み、ミケ? どうして止めるのよ! あなただって知っていたのに、黙っていたんでしよ。本当は怒りたいけど、それより先に怒らなければならないんだから!」
「怒ってどうするんだよ! 何で事実を受け止めもしないで、他にぶつけるんだよ!」
俺はチルに負けない声で叫んだ。
こうでもしなきゃ、こいつはなかなか冷静にならない。
「だって…私…私…」
チルは既に半泣き状態になっている。ここはやっぱり…。
「まあ、そんな訳だ。この通りあんたらの娘、いや俺の妹は真実を知ってしまった訳だよ。俺も知ってるんだよ。お父さん、お母さん」
多分俺が自分達の子供だって事は、何かしら知っていたのかもしれない。二匹は驚いた顔もせず、顔をほこばらせながら、こっちにやって来た。
「そうか、お前には分かっていたんだな」
「ああ。このペンダントを貰って、少ししたある日気付いたんだ」
「そうか…」
「あなた、本当の事を全部話しましょう。大切な娘がいつまでも悲しんでいる姿を見たくありません」
「そうだな…」
ついには泣き崩れてしまっているチルを見ながら話す二匹。
これで分かるんだ全てが…。
そして別れの時も近づいて来てるんだな…。
ゴーン
ゴーン
そんな最中で、あの鐘が鳴り響いた。
「この音は…」
それと同時に、一匹の兵士が入ってきた。
「国王様、ブラックキャット王国が大群を率いて、やって来ました」
「ついに来たか…」
城内に鳴り響く鐘の音は、ニャンタ王国とブラックキャット王国の最終決戦の音になるとは、この時誰も思ってもいなかった。
               第34匹 女王エルーシャ襲撃 へ続く

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