Cat's World

りょう

第27匹 果たせなかった事

             第27匹 果たせなかった事

1
「ミケ! ミケ!」
チルが俺を抱きかかえる。やべ、力が入らねえ。俺死ぬのか…。この世界でも俺は…。
「ち…る…」
「どうして、どうして、どうしてよミケ! 何で私何かの為に」
「守り…たかったんだ…お前を…
あの時俺は…守れなかった…から」
「あの時って、ブラックキャット王国が襲来した時? あれはどうしようもなかった事じゃない」
「違…う…」
俺はあの時も守れなかったんだ。まだ自分が小さかったが為に…。俺は無力だったんだ…。
「違うってどういう意味?」
「それは…」
そろそろ限界…か。俺は死ぬんだやっぱり。まだ何にもできなかったけど、仕方ないか…。まあ、いいか。
「み……」
ついに声が聞こえなくなった。俺はゆっくり目を瞑った。もう開かないのか、この目は…。はは、まさかこの世界でも死ぬなんて情けねえな俺。でも、いいか…。
俺は十五年前に果たせなかった事を果たせたんだし…。
こうして俺はミケとしての二ヶ月のにゃんこワールドでの人生に幕を閉じた。
2
………。
暗い、何にも見えない。当たり前か、俺は死んだんだから。
でも、何か温かい。
身体中が温かい。というか瞼が軽い。俺は目を閉じてたのか。
よし、開いてみるか。
俺はゆっくり目を開いた。
そこに広がったのは真っ白い天井

「は?」
そして、猫ではなく人間の身体。横では誰かが寝ている。
「俺は…人間に戻ったのか?」
でも俺は人間としては死んだんじゃないのか?
(いやちょっと待て…)
本当に俺は本当に死んだのか?俺の記憶を辿れば…。
(あの日俺は何者かに襲われて…)
刺されたんだ俺は…。誰かに…。それで死んだのか? いやもしかしたら…。
「ゆ、優斗。お、お前」
一人色々考えていると、誰かが入ってきた。こいつは確か…。
「拓也…か?」
「目を覚ましたのか! 優斗…。お前は目を覚ましてくれたのか?」
「どういう意味だよ?」
「お前が意識不明になってからすぐに、優紀も目を覚ましてないんだよ」
「え? 本当か?」
「ああ」
じゃあまさかにゃんこワールドに居たユキさんって、まさか本当に…。
「どうしたんだ優斗?」
「なあ拓也、優紀が意識不明になったのはいつからだ?」
「確か一ヶ月と少し前だぞ」
やっぱり…。
「なあ拓也、お前に聞いて欲しい事がある。とっても重大な話だ」
「何だ?」
俺はもう一度あの世界に戻らなければならないかもしれない。大切な人を救うため、そしてもう一度チルに会う為に。
「にゃんこワールド? 何だよそれ」
「俺が眠っていた間、ずっと過ごしてきた世界の名前だ」
                第28匹 もう一度あの場所へ へ続く

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