Cat's World

りょう

第24匹 そこなし計画 3

              第24匹 そこなし計画 3

1
それから一週間が経ち、そこなし計画もいよいよ大詰め。
「あのミケさん」
「何だ?」
「ちょっとやりすぎたんじゃないでしょうか?」
「俺もそう思った」
そこまでしなくても計画とは言え
、流石にこれはやりすぎたような気がする。屋根だけまともなような気がしたので…。
「普通に片付けて、普段通りに戻すか」
「はい」
という事でそこなし計画は強制終了。はぁ、無駄な作業はするべきではなかった。あ、ちなみに姉妹猫は何にもしなさすぎたので、三日目で強制帰宅してもらった。
「もうリフォームはやめて、あいつが折角退院するんだから、それの記念パーティでもやろうぜ」
「あ、それいいですね」
リフォームに失敗したけれど、俺達には他にやれる事がある。折角の退院なんだから、俺達は彼女を笑顔で向かえればいい。ただそれだけで充分だと思った俺だった。
2
それから二週間が経ち、今日はチルの退院の日。
「準備は出来たな?」
「はい」
既に俺達は準備完了している。あとは主役の帰りを待つのみ。
「緊張してきますね」
「ああ」
予定ではもうすぐ家に帰ってくるはず。俺達は何故かこの世界にも存在したクラッカーを片手に待機。
そしてついに扉が開く音がして…。
「ただいま、二人と…」
「「退院おめでとう」」
パーン
パーン
チルが帰ってくるなり、懐かしいクラッカーの音が鳴り響く。
「な、何二人とも?」
流石のチルもこれには驚いていた。それはそうだろう、サプライズなのだから。
「いやぁ、お前が今日退院だから
、俺とムムが祝ってやろうと思って」
「料理とかはミケさんが作ってくれました。ささっ、座ってください」
「あ、ありがとう」
チルを席に座らせて、コップを持たせる。よし、これでOK。
「じゃあチルの退院を祝って、乾杯ー」
「乾杯」
「か、乾杯」
「おいチル、元気ないじゃんか。どうしたんだよ。…っておい、何で泣いてんだ?」
元気がない彼女の顔をよく見ると、チルは何故だか分からないけど泣いていた。
「だって…」
「だって?」
「私こうやってみんなに、何かを祝ってもらえたのは初めてなんだもん」
「チルさん…」
「なるほどな、でも泣くなよ」
「どうして…?」
「折角の嬉しい出来事なんだから、もっと笑えよ」
「ミケ…」
俺の言葉を聞き、チルは一度泣き止みそして、笑顔になった。
「うん、そうだね」
「よっしじゃあ、もう一回やるぞ。チルの退院を祝って、乾杯!」
「「乾杯!」」
こうしてチルは無事退院し、また普段通り三人での生活が始まるのだった。
                              第25匹 狙われた命 へ続く

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