Cat's World

りょう

第21匹 まるで兄妹

                    第21匹  まるで兄妹

1
いざ作業開始!
と言いたいところだが、もう既に日が暮れているため、今日は何もせず。
「お前ら今日飯食うだけで、何もしねえのかよ」
「仕方ないじゃん。来たのが遅かったんだから」
「じゃあ働いてないし、お前ら飯抜きな」
「「えー」」
「同時に叫ぶなよ。冗談だから」
と、まあ冗談も交えながらの夕食。
………。
「おいお前ら、食いすぎだろ? 少しは加減しろよ」
「だって、お腹減ったんだもん」
「だもん」
「ですもん」
「ムムもどさくさに紛れるな! 俺の分が…」
「おかわり!」
「話を聞けよ!」
ああ、これだとリフォームが終わる前に、家計が崩壊しそうだぞ…。
「私もください!」
「お前は何杯喰うんだよ!」
2
そんな無駄に忙しかった夕飯も終わり、サクヤとムムは疲れたのか、先に眠ってしまった。こいつら今日、食ってしかないよな?
「本当食べ盛りなんだから」
「いやいや、お前も結構食べてたぞ。これ以上食べると本当に追い出すからな」
「ごめんってば」
本当に分かってるのかこいつ。
「でもさ、私あなたに感謝してるよ」
「え? 何で?」
「チルを助けてくれたじゃん、この前」
「ああ、あれは心配になったから向かっただけだよ」
「でも助けたいって気持ちはあったんでしょ?」
「そりゃあ、まあそうだけど」
あの時俺は何も考えずに動いていた。とにかく、チルが危ないと感じたから動いていた。ちゃんと守ってやりたかったから。
「竹刀を持ってまで?」
「それは言わないでくれ」
武器はあれしかなかったんだから、仕方がない。
「ふふっ、まるで兄妹みたい」
「何でだよ」
「だって必死で妹を守ろうとする兄って、良くいるじゃない」
「それはそうだけどな」
確か俺は人間の頃に妹が居たらしいから、もしかしたらそれが癖になってたのかもしれないな…。
「とにかく、チルを守ってくれてありがとう」
「ああ」
サクラはそういうと眠ってしまった。
(守ってくれてありがとう…か)
まさかそんな事を言われるとは思ってもいなかった。俺はただ、彼女を守る事が義務だと思ったから。
『まるで兄妹みたいね』
周りから見るとそうかもしれないが、彼女は元から猫だったはずだ。俺とは別の親の元(ニャンタ王国の国王と王女)で猫として生まれている。だからあり得ないはずだ…。
妹ね…。
あの事件がなかったら、人間だった頃の俺には家族が居た。父、母、妹、そして俺。また少しずつ記憶が蘇り始めたからか、そこら辺もはっきりしてきた。
あの事件は死ぬ前から換算して十二年ほど前、俺が小学三年生の頃(つまり死ぬ前は丁度二十歳)に起きた。妹はまだ幼くて、三歳にも満たなかった。生きていたら十五歳だろう。これから思い出を作るはずだったのに、誰かに殺されたんだな。可哀想に。本当に可哀想だ。俺はその分も生きてやらなきゃいけないはずなのにどうして…。
どうして俺も死んだんだよ…。
                        第22匹 そこなし計画 2 へ続く

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