Cat's World

りょう

第17匹 中央広場の惨劇

                   第17匹 中央広場の惨劇

1
「うわ、これは酷いな」
王都へたどり着くと、そこは既に戦場と化していた。剣と剣が交わる音が聞こえる。うん…。
「俺ってアホだな」
チルを助けに行く為とはいえ、竹刀一本で防具なしはただの馬鹿だよな。
「とりあえず誰にも見つからない様に探すか」
味方に見つかったら、間違いなく追い出されるだろうし。
俺は戦いに紛れ込むかの様に王都に潜入した。
2
(助けに来たと言っても、どこに居るなんて分からねえよな)
王都に入って五分、一通り回ったが誰かが居る気配すらしない。もしかしたらチルは既に帰っているのかもしれない。
(早まらないで家を守ってれば良かったな…)
今更後悔をする俺。早とちりは良くなかったかもしれない。
(こっそり出ていくか…)
と王都から出ようとした瞬間、突然巨大な爆発音が聞こえた。
(な、何だ?中央広場から聞こえたな)
よく見ると中央広場から煙が上がっている。そういえば危険だという事で調べてなかったな。
(危険だけど向かうか)
もしかしたらチルも居たのかもしれない。だったら…。
(やばいぞ)
俺は嫌な予感を覚えながらも、中央広場へと向かった。
3
「おい、これはどういう事だよ!」
中央広場へ辿り着くと、そこは酷い状況になっていた。沢山の猫が爆発に巻き込まれたのか、うつ伏せに倒れている。あの威力だと、無事なのかは分からない。そしてその中には…。
「チル!」
爆心地から少し離れた場所でチルが倒れているのを発見し、慌てて駆け寄る。良かった、息はしてる。
「ミケ…、どうして…ここに?」
「ブラックキャット王国が攻めてくるのを見たから、お前が心配になって慌てて来たんだよ。大丈夫か?」
「身体中が痛いけど、何とか大丈夫」
「はぁ、良かった…」
とりあえずチルが無事なのは確認できた。でも問題は…。
「生き残りを発見、直ちに排除する」
それをブラックキャット王国兵に見つかった事。数は…ざっと三十人か。まあ、戦場のど真ん中に来たんだから当たり前か…。
「ミケ…、どうするの?」
「心配するなチル。ここは何とかしてみせるよ」
「でもあなた、竹刀一本しか無いわよ。こっちの援軍を待った方が…」
「大丈夫だって。まともに戦う気はないから」
「え?」
竹刀一本で勝算はほぼない。かと言って、援軍を待っていたら確実にやられる。だから俺は、ヒットアンドアウェイでここから脱出を試みる事にした。逃げながらなら、こちらの兵士が助けてくれる。きっと大丈夫だ。
「俺は絶対にお前を守ってやる。だから、絶対に離れるなよ」
「うん」
俺は立ち上がり、竹刀を構えて戦闘体制に入った。さあ、いっちょやってやりますか!
                           第18匹 生き残れた へ続く

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