Cat's World

りょう

第15匹 クポとの別れ そして

          第15匹 クポとの別れ そして

1
とりあえずユキさんには家の中で待機してもらい、俺はクポの説得に向かった。
「なあクポ、文句ばっかり言うなよ。ユキさんにも迷惑かけてるだろ?」
「絶対に嫌だ! 私はチルお姉ちゃん達と暮らしたいの! もっと一緒に居たいの」
「そうは言ってもな…」
正直な所、俺達だってこのまま一緒に居たい。でもこうして彼女を引き取ってくれる猫が現れてくれた。だったら、それに答えなければならないと思っている。
「だって毎日がすごく楽しかったんだもん。お父さんやお母さんの代わりになってくれたんだもん。だから…離れたくない」
「クポ…」
流石にここまで言われると、俺達も辛い。ここはやっぱし諦めるしか…。
「ねえクポ」
何も言えない俺の代わりにチルが優しく話しかける。
「そんなに私達と離れるのが嫌なの?」
「うん」
「でもそんなにわがままばっかり言うと、どんなにクポが私達を好きでも、私達がクポを嫌いになっちゃうよ?」
「どうして…嫌いにならないで」
「じゃあ言う事を聞かなきゃ。クポがお利口さんになれば、私達は絶対に嫌いにならないから」
「本当に?」
「うん。ミケやムムだってそうでしょ?」
「ああ。お前がここで言う事を聞いてくれれば絶対に嫌いにならない」
「クポちゃんがお利口さんなら、私も絶対に嫌いにならないよ」
「ね?」
「お姉ちゃん、お兄ちゃん…」
「それに彼女に聞いた限り、そんなに家は遠くないからいつでも会いに行けるから。だから、泣かないで笑おう」
笑顔で言うチル答えるかのようにクポも…。
「うん!」
笑顔で答えるのであった。
2
「じゃあね、お兄ちゃん、お姉ちゃん達」
という事でそのままクポはユキさんの家へ向かう事に。もうクポの顔には涙はない。満面の笑みを浮かべている。
「ああ。またな」
「じゃあね」
「さようなら」
それぞれ別れの言葉を述べ、最後にユキさんが挨拶をした。
「この度はクポを二週間ほど引き取ってくれて、ありがとうございました。何とお礼を言ったらいいか」
「いえいえ。そもそもクポを連れて来たのは、私の親友ですから。私達は友達の代わりに面倒を見ただけですし」
「それでもこの子が無事で居て良かったです。彼女の母親とはこっちに来て、初めての友達ですから」
「あ、そうだったんですか…」
「だから亡くなったと聞いて、本当に悲しくて。せめてもと、この子を引き取りに来たんです」
一人寂しそうに語るユキさん。彼女も大変なんだな…。
ん?何か引っかかるような…。
「とりあえずこうして引き取れて良かった。これからは、この子と頑張って暮らしますね。ほら、行こう」
「うん」
ユキさんはクポの手をつないだ後、深く頭を下げた。
「それじゃあお世話になりました」
そう言うと彼女はクポと共に去って行った。
「行っちゃったね」
「はい…」
「ああ…」
残った俺達は、少し寂しい気分になった。
3
クポが家から居なくなって数日後の午後、どこからか巨大な鐘の音が聞こえた。
「? 何だ?」
あいにくチルとムムは出かけている為、何が起きているか分からない俺。
「一旦外に出てみるか」
原因を探る為に外へ出る。そして出るや否や、俺は鐘の音の意味を知る事となる。
「な、何だよあれ?」
王都とは反対側からやって来る謎の大群。もしかしてらあれって…。
『この世界はニャンタ王国とブラックキャット王国の領土で別れていて、二つの国は敵対しているの』
チルの最初の頃の言葉を思い出す。
「ブラックキャット王国が攻めて来たのか?!」
何でこんなタイミングで。
                     第16匹 絶対絶命の中で へ続く

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