Cat's World

りょう

第11匹 チルの秘密

                      第11匹 チルの秘密

1
翌朝、昨日の事を整理する為に散歩をしようと外に出ると、何故か槍を持ったいかにも兵しみたいな格好をした猫に囲まれた。
「何だよお前ら」
俺がそう言うと、いかにもトップらしき雰囲気をかもし出して猫が、俺の前に立った。
「我々は罪を犯した猫を強制連行する拘束部隊だ。貴様ともう一人のチルって猫に用がある」
「は? 罪を犯した? 俺達は何もやってねえぞ」
「嘘はよくない。そこに居る白猫が証明しているじゃないか。お前がチルだな?」
いつの間に俺の後ろに来ていたチルにそう言う。
「それは紛失していた国の極秘資料だ。何故貴様らが持っている?」
「いや、これは拾いもんだが」
「拾っただ?馬鹿馬鹿しい。極秘資料をそこらで拾うわけないだろ」
「いやいや、事実だからな」
恐らくあの慌てん坊猫が落とした物だ。これが国の極秘資料だなんて分かるはずない。まあ確かに、内容は普通ではなかったが…。
てか…。
「なあチルよ」
後ろを向かずにチルに話しかける。
「何?」
「俺は今色々お前に沢山聞きたい事があるんだが」
「えっ?」
あ、動揺してるなこいつ。絶対何か隠してるな。
「まあ、それは後ででいいや」
「うん…」
声のトーンが下がってる。やっぱり変だ…。
「お前らは俺達を連行してどうするんだ?」
「国王様が直々に罪を与えるそうだ」
「ふーん、なるほどね」
何故か余裕の様子をみせるチル。これから死ぬかもしれないのに、余裕だなおい。
「説明は以上だ。さあ来い」
いつの間にか手を縛られ、何も抵抗が出来なくなる。
「ちっ、何なんだよ…」
俺とチルはそのままニャンタ王国に連行される事になった。
2
城内に入るなり俺達は、そのままニャンタ王室へ連れて来られた。
「リック国王、二匹を連れてまいりました」
「よくやった」
俺達は国王と王女の前に突き出される。な、何が始まるんだ?
「久しぶりだなチル」
「どうして呼んだのよ。罪猫なんて馬鹿みたいな嘘ついてまで!」
「まあ、言葉のあやだと考えろ」
挨拶も返さずに、いきなり怒鳴るチル。
嘘?どういう意味だ。俺達は国家秘密を知ったから、罪なんじゃ…。
いや、ちょっと待て。
「何が言葉のあやよ。自分で国から追い出した娘を呼び出す為に、これしか出来ないなんて情けない話よ」
やっぱりそういう事か…。ただそれは、とんでもない話だぞ。
「おいチル、お前…」
「ごめんねミケ。やっぱり分かっちゃったよね」
「いや、謝られてもな…」
「隠すつもりは無かったんだけど」
「ここまで巻き込んでおいて、それはねえだろ」
彼女が隠していた秘密。
それは両親の事。
そして彼女の両親は今目の前にいる。
国王と王女として。
なのに何でチルだけあんな離れに住んでいるんだ?
答えは簡単だ。
こいつは何らかの理由で、国を追い出されたから。
ただそれだけだ。
                          第12匹 心の中の矛盾  へ続く

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