Cat's World

りょう

第8匹 サクラとサクヤと迷い猫

          第8匹 サクラとサクヤと迷い猫

1
ムムがやって来て、大体一週間が経った頃、また珍客が家を訪ねてきた。
「チルちゃん、遊びにきたよー」
「来たよー」
「いらっしゃい、サクラ、サクヤ」
やって来たのはチルの親友らしく、双子の猫のサクラとサクヤらしいが…。
「似すぎてどっちがどっちだか、分からないんだが」
「ごめん。私も時々分からなくなるの」
二匹ともピンクの毛で、尚且つ顔も似ている。その為どっちがどっちだか分からない。現にムムも俺も理解できてない。
「でもサクラには黒子があるから、それで見分けてるのよ」
いや、それでも分からねえから。
「で、どうしたのよ今日は? 何か用事?」
「あ、そうそう。チルにどうしても手伝って欲しいことがあって」
「手伝って欲しいこと?」
「うん」
交互に喋る二匹。どっちがどっちなんだ?
「おいで」
サクラ(よく探すと小さな黒子がほっぺにあった)が何もない草むらに呼びかけると、草をかき分けてやってくる子猫が一匹。
「この子迷子らしいの。親を探してあげられないかな?」
「お母さん…ひっく」
迷い猫だった。
2
という訳で、迷い猫を引き取った俺達は、この子猫に簡単な質問をしてみる。
と言っても俺は全くこの世界を知らない為、聞くのはチルとムムだが。
「君のお家はどこにあるの?」
「お家はない…」
「え?」
家がない?どういう事だろうか?
「知らない国の猫がやって来て、何もかも燃やしちゃった。お父さんもお母さんも一緒に…」
「じゃあそれって…」
この猫、迷い猫ってレベルじゃないぞ。
「ねえサクラ、この子どこで見つけたの?」
「昨日私達の村の近くで倒れてたの。だからこの子の出身地は、多分国境近くの村だと思う」
「国境近くの村ね…」
チルは目を閉じながら何かを考えている。その間に俺はサクラにある事を尋ねた。
「じゃあこの子、家がないって事だよな」
「うん。私も今知ったけど」
「家ないんじゃあ、どこにも連れていけなくね?」
『あ』
全員が声を揃える。え?今気づいたのかこいつら。
「と、とりあえず私はここまで連れてきたから、あとはチルに任せて帰ろうサクヤ」
「う、うん」
「おい待てお前ら」
二匹は帰ろうとしたが、俺は止める。
「そのまま放置ってのは無いよな?」
「わ、私達は何も出来ないし。ねえ?」
「うん」
「だからって帰さねえぞ」
俺は二匹に詰め寄る。このまま逃がしてたまるか。
「わ、私達家遠いから」
「さよなら」
「あ、待て!」
二人は猛スピードで家を出て行ってしまった。
「最悪だ…」
「つくづく運が悪いわね私達」
「はい…」
「お前が言うな!」
「あんたもね…」
と言うわけで、チルの家はいつの間にか四人暮しになってしまった。
「「「はぁ…」」」
「どうしたの? お兄ちゃん達」
                               第9匹 一つの家族 へ続く

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