Cat's World

りょう

第6匹 静かな夜と騒がしい朝

              第6匹 静かな夜と騒がしい朝

1
結局その日、チルは夕飯を済ますとすぐに部屋にこもってしまい、例の紙についての話を聞く事ができなかった。
(ったく、何なんだよあいつは…)
それが原因なのか、今晩はやけに静かだった。外の草が揺れる音しか聞こえてこない。
(この世界に来て数日が経つけど、相変わらずここでの生活は慣れねえよな…)
生活の仕方は人間と変わらないとはいえ、体は小さいし眠りづらいし、いい事が一つもあった覚えがない。
(こんなんなら死ななきゃよかった…)
未だに死んだ理由が分からないが、やっぱり実感が湧いてこない。だって、今俺はこの世界で生きているのだから。
(寝るか…)
今日も特にこれと言った事件も起きず(起きなくていいんだが)一日が終わろうとしている。こんな生活大丈夫なのだろうか。
(って考えても無駄だよな)
こうして今日も何もない一日が終わった…。
2
翌朝。
空から猫が降ってきました。
……。
「は?」
うん、まず状況を整理しよう。
普通に朝起きて、今日も一日が始まろうとしていた。その時、突然天井を突き破って何かが落ちてきたのだ。で、それが…。
「猫?てか何で羽が生えてるんだ?」
何故か背中に羽が生えた猫だったという訳だが、
「うぅ、痛った。あれ? ここは?」
謎の翼を生やした猫は起き上がるなり、辺りを眺め俺をみつける。
「あなた誰?」
「いやいや、お前こそ何者だよ。いきなり空から降ってくるし、翼は生えてるし、天井壊すし、猫だし」
「いや、あなたも猫でしょ?」
それはそうだが。
「てか、天井どうしてくれるんだよ。ここ俺の家じゃねえから。」
「え? あなたの家じゃないの?」
「そうだよ! こんな時にチルが来たら…」
ガチャ
「なんかすごい音したけど大丈…」
ああ、最悪だ。
3
説教タイム
「あんたどうしてくれるのよ? この家作るのに苦労したのよ」
「すいません。私飛んでいる途中で急に眩暈がして」
「眩暈がしたからって家に落ちないでよ。てか、飛んでいる途中?」
「はい。私羽がついていて飛べるんですよ」
「飛べるって…というか、それ羽なの?」
今更気がついたのかこいつ。
「す、すごい!何それ初めて見た!」
説教タイム終了
「どういう原理なの、これ?」
「それが私にも分からないんですよね。この世界に生まれた時から羽が生えていたので…」
「へぇ」
羽トークで盛り上がる二人。それは構わないんだけどさ…。
「あのさ、天井どうするんだ?」
「あ」
天井に穴が空いてるのを忘れないでもらいたい。
                             第7匹 二匹の居候猫 へ続く

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