ルームメイトが幽霊で、座敷童。
伽藍洞の心とリコレクション(前編)
俺は家に閉じこもっていた。
パソコンの電源を入れても何もする気が起きなかった。
テレビのプラグはゲーム機に刺さったままだ。2Pもプレイ出来るように二つ刺さっている。
……だが、それすらもやる気が起きない。
寝転がる。天井を見る。そこには真新しさも何もない、普通の天井が広がっていた。
なぜ俺はツクヨミを殺すことができなかったんだろう。
神だからか? 否、そういうわけではない。碧さんを失った怒りで、俺はそいつを殺そうとした。
だが、何故かそこで冷静な判断をしてしまった。
俺は殺せなかった――。
「リト、ご飯できたよ」
祐希の声を聞いて、俺は起き上がる。外はもう暗くなっていた。そうか、もうそんな時間なのか。
隣の部屋に行くと、祐希がエプロン姿で笑っていた。いつもの様子ならおちょくる一言でも言ってやるんだが、そんな余裕すら無かった。
無言で俺は座り、手を合わせる。
「…………いただきます」
「召し上がれ、リト」
俺が座ったのと同時に祐希も座り、微笑みながら俺を見る。
祐希が作るのは純和風な食事だった。豚汁に鮭の塩焼き、ほうれん草のおひたしに大根の漬物まである。
俺は先ず、豚汁を一口啜った。野菜を相当煮込んだらしく野菜の味が汁に溶け込んでいた。具材は豚肉と人参、大根とごぼうという極一般的なものであるが、それでもなぜだか普通のより美味しく感じられた。
鮭はどうだろうか、と思いながら箸を使って鮭を解す。それを口に入れると程よい塩気が口の中を包み込んだ。その味を覚えつつご飯を口に掻っ込んでいく。その姿を祐希は微笑みながら見ていた。ずっとずっと見ていた。
その視線が、俺にとってとても痛かった。
別に彼女が悪いわけじゃないのに。
凡て俺が悪い。俺の責任だっていうのに。
「……リト、自分ひとりで背負っちゃだめだよ」
祐希が言葉をかけたのはその時だった。
祐希の話は続く。
「確かに碧さんが消えてしまったことは悲しいけれど……それを自分ひとりの問題として抱えちゃいけない。碧さんが消えてしまったとき、リトは神事警察として活動していたんだ。ということは神事警察の責任とも言えるよ」
「いいや、いいや、違う。俺が悪いんだ。俺が凡て悪いんだ」
言葉が、無意識に、紡がれていく。
祐希は首を横に振った。
「違うよ。君は悪くない。リトは悪くない。みんなで背負っていかなくちゃいけないんだ」
「違う、違う!」
俺に優しくしないでくれ。
俺にそんな言葉をかけないでくれ!
だが、そんなことを俺には言えなかった。俺には言える勇気が無かった。
祐希は俺の方に座ったかたちで近づくと、俺を優しく抱きしめた。祐希の香りが、俺の鼻腔を擽る。
パソコンの電源を入れても何もする気が起きなかった。
テレビのプラグはゲーム機に刺さったままだ。2Pもプレイ出来るように二つ刺さっている。
……だが、それすらもやる気が起きない。
寝転がる。天井を見る。そこには真新しさも何もない、普通の天井が広がっていた。
なぜ俺はツクヨミを殺すことができなかったんだろう。
神だからか? 否、そういうわけではない。碧さんを失った怒りで、俺はそいつを殺そうとした。
だが、何故かそこで冷静な判断をしてしまった。
俺は殺せなかった――。
「リト、ご飯できたよ」
祐希の声を聞いて、俺は起き上がる。外はもう暗くなっていた。そうか、もうそんな時間なのか。
隣の部屋に行くと、祐希がエプロン姿で笑っていた。いつもの様子ならおちょくる一言でも言ってやるんだが、そんな余裕すら無かった。
無言で俺は座り、手を合わせる。
「…………いただきます」
「召し上がれ、リト」
俺が座ったのと同時に祐希も座り、微笑みながら俺を見る。
祐希が作るのは純和風な食事だった。豚汁に鮭の塩焼き、ほうれん草のおひたしに大根の漬物まである。
俺は先ず、豚汁を一口啜った。野菜を相当煮込んだらしく野菜の味が汁に溶け込んでいた。具材は豚肉と人参、大根とごぼうという極一般的なものであるが、それでもなぜだか普通のより美味しく感じられた。
鮭はどうだろうか、と思いながら箸を使って鮭を解す。それを口に入れると程よい塩気が口の中を包み込んだ。その味を覚えつつご飯を口に掻っ込んでいく。その姿を祐希は微笑みながら見ていた。ずっとずっと見ていた。
その視線が、俺にとってとても痛かった。
別に彼女が悪いわけじゃないのに。
凡て俺が悪い。俺の責任だっていうのに。
「……リト、自分ひとりで背負っちゃだめだよ」
祐希が言葉をかけたのはその時だった。
祐希の話は続く。
「確かに碧さんが消えてしまったことは悲しいけれど……それを自分ひとりの問題として抱えちゃいけない。碧さんが消えてしまったとき、リトは神事警察として活動していたんだ。ということは神事警察の責任とも言えるよ」
「いいや、いいや、違う。俺が悪いんだ。俺が凡て悪いんだ」
言葉が、無意識に、紡がれていく。
祐希は首を横に振った。
「違うよ。君は悪くない。リトは悪くない。みんなで背負っていかなくちゃいけないんだ」
「違う、違う!」
俺に優しくしないでくれ。
俺にそんな言葉をかけないでくれ!
だが、そんなことを俺には言えなかった。俺には言える勇気が無かった。
祐希は俺の方に座ったかたちで近づくと、俺を優しく抱きしめた。祐希の香りが、俺の鼻腔を擽る。
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