ルームメイトが幽霊で、座敷童。

巫夏希

姉と弟の兄弟喧嘩

 私は歩きながら、さきほど聞こえた声の内容を思い返す。


 ――次はない


 その声は私も聞いたことのある、とても聞き覚えのある声だった。

「……イザナギ。あいついったい何を考えているつもりなのかしら……」

 そう私が言っても、何も変わらない。
 でも私は――あいつを倒さねばならない。
 妖怪の王、百鬼夜行。
 どうしてあいつがそれをするのかは疑問で仕方ないけれど……先ずは話し合いをして決めよう。それからもで倒すのは構わないだろう。
 でも、疑問はまだあった。
 どうしてイザナギはそれを止めようとするのか。別にこれは悪くない。人間たちを救う行為にほかならないはずだ。
 ――まさか。
 私はひとつの結論を導き出していた。





「そうだよ、姉ちゃん。その通りだ」

 声が聞こえた。
 その声は、どこか懐かしい声だった。
 気が付けば周りは暗くなっていた。向こうについたのは二時頃のはずだ。だからこんなに早く暗くなるはずが――。

「……やだなあ、姉ちゃん。忘れちゃったの? 僕がどんな『カミサマ』かって」
「あんた……いつからオオヤシマの狗になったのよ……!」

 木の上に、それは立っていた。
 白髪の少年だ。着物を着て、巾着袋を腰につけている。細い目に透き通った顔立ちは、まあ、世間でいうところのイケメンってやつなんだろう。
 私は、その名前を言う。

「……ツクヨミ……あんたそういう神じゃなかったはずよ……!!」

 私の言葉に、ただツクヨミは笑っているだけだった。


 ◇◇◇


 碧さんが単独行動をしている頃、俺たちも人間なりに行動を開始していた……と言いたいところなんだが、生憎何も見つからなかった。

「姉ちゃん、何も見つからないぞこのままじゃ」
「解っている。解っているさ……! でも、見つからない! 百鬼夜行を倒す手段が、私たち『神憑き』に、神事警察に、百鬼夜行を倒す方法が見つからないんだよ!!」
「それでも神事警察か!? 俺たちだってやらなくちゃ、単独行動で頑張っている碧さんに示しがつかねえじゃねえか!!」

 俺は姉ちゃんに思いの丈をぶちまけた。
 直ぐに俺は思い返したが――もう遅かった。

「すまなかったな、リト。もう戻っていい。もう帰っていい。別にお前を咎めることはない。今回の戦いによる被害は、凡て私の責任で報告しておけ」
「姉ちゃん……」
「いいから、帰れ!!」

 ……その言葉に、俺は逆らうことも出来なかった。
 俺は何も言うことはできなかった。それは姉ちゃんにあんなことを言ってしまったせいかもしれない。碧さんを単独行動させてしまったことへの後悔かもしれない。
 だが、一番にあったのは。
 俺が無力である――そういうことだった。

コメント

コメントを書く

「コメディー」の人気作品

書籍化作品