ルームメイトが幽霊で、座敷童。
博士と調査と秘密機構(中編)
「……そういうことをするなら、『やるよ』とか一言言って欲しいもんだよまったく」
碧さんがあーだこーだと言っている。済まんな。もし駄目だったらそのときの碧さんの攻撃にちょっと恐れ戦いてしまってな。
とりあえず、俺は碧さんに改めて説明した。俺の能力は魔法師であり、魔法を使うことが出来る、そのことを。
俺の話を聞き終わると、話の間じっと黙って聞いていた碧さんが口を開いた。
「ふぅん、魔法師ねぇ。便利っちゃ便利な役どころじゃない? とりあえず今には完全にいい方に進んでいると言えるんじゃ?」
そうだな、とりあえずそうだろう。今においてはこの能力を有効に活用している。
一先ず、俺はそこで考えるのをやめ、辺りを見渡した。
「……ここは、どこだ?」
そこは、暗い部屋だった。たくさんの石柱が置かれていた。
「こいつはなんなんだ……?」
と石柱に近付くと空気が生温くなるのを感じた。
「こいつは……石じゃない!?」
明らかにそれは石ではなかった。自然の冷たさではなくて熱を内包した……それに、人工的な冷たさを感じた。
これは、つまり。
「……コンクリート? ここにある壁すべてがコンクリートだっていうのか?」
「そうだ、その通りだよ」
その声を聞いて、俺は振り返った。
そこには、一人の人間が立っていた。しかしその格好はこの世界には似つかわしくない黒のリクルートスーツだった。そして、その人間は俺にも見覚えのある奴だった。
そう。
海馬王明がそこに立っていた。
「海馬王明……!!」
俺は剣を抜こうと――したが、海馬王明は笑っている。
「何がおかしい!!」
「……いやあ、その剣で私を刺すのかと思うと、笑いが止まらないものでね」
「貴様……っ」
「そもそも、君にその剣で私を殺すことが出来るというのか? それが気になるポイントだね」
「出来るとしたら?」
「いいや、出来ない。確実だ。なんなら、この私を刺してみろ。ゲームの中だから、刺しても死にゃしないがな」
そう言って、海馬王明は両の手を広げる。馬鹿にしているとしか思えなかった。
一度、やってしまえ。
俺は――あいつも――ゲームの中の住民にしか過ぎない存在だ。つまり、今別に倒しても何ら問題はない。
だからこそ、あいつは今「ここで私を刺せ」などと抜かしたのだ。
俺は、海馬王明をこの剣で刺すために、剣を鞘から抜き、その方へ走り出した。
そして――海馬王明の身体を剣が――。
――貫かなかった。
「……どうして、そうも悠々と罠にはまってしまうかね。まあ、見てて飽き飽きしないのは事実だけれど」
海馬王明に、確かにその剣を刺したはずだった。現に俺の剣は海馬王明の腹部を目掛けて貫かんとしている。
なのに、にもかかわらず。
その剣は、身体を貫くことなく、そこで静止している。
何故か?
それは、俺にも解らなかった。
「……一度、考えてみなかったのかね」
海馬王明は小さく微笑む。
「私は、この『ゲームを制作した』側の人間だ。だから、所謂チートということがいとも簡単に出来てしまうということに。そう……例えば、『貫通するはずの剣が貫通しなかったり』ね」
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