ルームメイトが幽霊で、座敷童。
脱出の計画と最大目標(後編)
「……碧さん、俺にはまったく何を言っているのか解らないんだが?」
「解らないならそれもそれでいいだろうよ。生き方ってもんは人それぞれだし、それをとやかく言う権利は私には無いからね」
ならば、何故そんなことを言ったのだろう。
時たま、碧さんは電波的な(つまり何か“異常”な電波を受け取っているのではないか――ということだ)発言をする。それを真面目に捉えるか、あくまでも『冗談』のカタチで捉えるかは、それは俺の判断に任せられるとかいう訳だ。
それを踏まえて今回の発言は、どうやら本気で捉えた方が良さそう、というより良い結果を導くだろう、と自分で勝手に結論付けた。幾ら電波的な発言とはいえ、碧さんも“何らかの実証がある”から発言する(と本人が言っていた)。つまりは、何かあるからそれを言った。選択権は聞き手の俺に委ねられる。
「碧さんはさ……こういうとき、どうしたんだ?」
笑われるかもしれなかった。それでも、聞いてみたかった。
「わたし?」実際、答える時の碧さんの顔は人を蔑むような笑顔だった。「私はね……あんまり考えなかったかね。もう、自分の勘を信じていたね。勘ってやつは時には自分の考えること以上に、良くも悪くも面白い結果を生み出すもんだ」
「良くも悪くも、ね……」
そう呟いて、俺は直ぐ傍のテーブルに置かれていたポットを取り出し、それをその隣に置かれていたコップに傾けた。すると、ポットの中から麦茶が出て、それがコップの中に注がれる。
適量まで注いで、それを思い切り口に流し込んだ。よく冷えた麦茶だった。これがゲームとは、あまり想像がつかない。
こういうゲームとは思えないリアルさが『ホープダイヤモンド・ゲーム』の売りだったのだろう。確かにこれならば現実から逃げ出し、この世界を現実とする人間が続出しても然程不思議ではない。
「しかし……今は夏なのか? その割にはそれほど暑くもないんだが」
「さっきの人が言ってたけど、今年は何年かに一度の『冷夏』だとさ。野菜の収穫も少なくなるから値段が跳ね上がるかもしれない、ってリザ……あのラーメン屋の人が嘆いてたよ」
「このゲームってそこまでリアルに出来てるのかよ……。というかそこまでの時間は経っていないはずだぞ?」
「そういうのは城からのアナウンスが教えてくれるとかどうこう言ってたかな」
なるほど、つまり城がこの世界を現実へと限りなく近付けるために手助けをしているということだ。
ということは城に行けばやはり何かあるのだろうか……? そんなことを考えて、俺は漸く碧さんと共に部屋から出た。
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