ルームメイトが幽霊で、座敷童。
ゲームの機内は案外快適(前編)
「ゲームの世界……! ここがゲームの世界だって言うのか!?」
「そういうことだろうな。『見当違い』ってのはそれだ。奴は開発者の方なのだから、俺達ゲーム内の存在からすれば不可侵存在……ってことになる」
碧さんの言葉に俺は持論を提示した。問題は……それが何時から続いていたか、ということだ。
考えられるのはこの『ゲームショー』会場にある監視カメラ。それで俺達を撮影して魂を抜き取り、会場そっくりに作り上げたゲームの世界に送り込んだ……そういうことなのだろう。
「ここがゲームの世界だというなら、どうやって抜け出す? ゲームをクリアしろ……とでも言いたいのかあいつらは?」
美夏さんが苦言を呈した。そりゃそうだ。ゲームの世界に突然(理由はあるにしろ)放り込まれたのだから、その怒りは計り知れないものだ。
「でも、ゲームのセカイってのもけっこういいものよ?」
碧さんはゆらゆら揺れながら言った。その姿勢は非常に苛立たせるものとしてはピカイチであった。
碧さんは人の神経を逆撫でする才能(?)にでも恵まれているのか、そういうのが多い。描写されないだけで怒っている人はたくさんいるんだが……最終的には『そんなもの意味がない』としてぞんざいに片付けてしまう。碧さんにとってもそういう行為は苦手(嫌悪、の方が近い)らしくさらにエスカレートさせていき……と繰り返しだ。履歴をもったループのようなものだ。
一度、碧さんに訊ねたことがある。「なぜそんなことをするのか」と。
碧さんは言った。「楽しいことをしていても心の中じゃ笑っていない。そんなのって『楽しい』と言えるのかしら」と。至極当たり前の事だ。
つまり、ただ楽しませるがために――今の行動をしているということなのだ。
碧さんのようなちゃらんぽらんなのでもそんなことを考えているのだ、と――
「おい! なんだよちゃらんぽらんって!!」
「だから、心を読むなよ!!」
「読めちゃうんだから、仕方がないでしょ! ちゃらんぽらんなの、って扱いが酷すぎるんじゃない!?」
「冗談だ」
「冗談、って……!」
「ほら、あの影に剣を持った骸骨が」
「何言ってるのかしら二代目? そんなことを言ったって騙されるわけが……」
いや。
美夏さんが言ったのはまったくの間違いではない。
もっと言うなら、正論だ。正しい答えだ。
碧さんが後ろを振り返ってからまったく話をしないのも……それが証拠であるからだ。
つまり、つまり。
碧さんの目の前には骸骨が立っていた。
しかもちゃんと動物の皮を鞣したものだと思われる革の鎧や銅の剣まで装備していやがる。何処のファンタジーゲームだって話だ(これ自体がファンタジーゲームだという話はこの際置いておく)。
「う、うひゃあああああ!!」
碧さんは驚き余って転んでしまった。気持ちは解るが、そこには何もない。
「ちょ、ちょっと!? 誰か助けてくれたっていいんじゃないの!!」
「骸骨剣士(暫定)に立ち向かう程の戦力と武器がねぇよ!」
「封霊銃は!?」
「使いきった!」
「使えねぇな!」
使えねぇな! はないだろうよ! 幾ら何でも言っていいことと悪いことがあるだろうが!
「……まぁ、一先ずどうするか……!」
骸骨剣士が碧さんに斬りかかったそのとき――!!
「でやああああ!!」
その声は骸骨剣士の後ろから聞こえた。
そして、骸骨剣士はゆっくりと倒れていった。
「た、助かった……!」
俺たちはへなへなとその場にしゃがみこんだ。
「危ないじゃない! 武器も防具も装備しないでこんな深い森まで来るだなんて!!」
その声に俺たちはとんでもない違和感に気付いた。
俺たちの居た場所は『ホール』のような場所で、外も都会だったはずだ。
だが、今いる風景は“確かに森の中だった”。
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