ルームメイトが幽霊で、座敷童。

巫夏希

合流の時期は超予想外(中編)


「……まぁ、騒ぐなよ」
「この状況で、落ち着いていられるかよ?!」
「キャラ崩壊を起こしているからさっさと落ち着くんだ。いいか? 深呼吸だ。とにかく心を落ち着かせるのが大事だからな」

 そう正論を言われてしまうと僕も言い返せなくなる。精神統一、深呼吸ってのは本当に大事だ。急な事態で慌ててしまった人の頭を急拵えとはいえリフレッシュさせることが出来るからね。
 時折、ヴンダーはカミサマなんかじゃなく、僕の見知った人間の幽霊なんじゃないかと思えてくる。いや、恐らくそうだと思う。ちゃんとした証拠もないから、ただの憶測に過ぎないけれど。

「……どうした?」
「ん、あぁ。済まない、少しだけ考え事をしてた」
「しかしお前も案外ずぼらだな。そんなタイムリミットが刻一刻と迫る状況で考え事なんて出来るかね?」

 ヴンダーの言葉は正しかった。笑っちゃうくらい、正しいものだった。
 だからこそ、まぁちょこっとだけ悔しいものがある。その理由は……僕の胸のうちだけにしてもらいたい。

「一先ずだな。まずはお前に一つ謝っておきたいことがある」
「どうしたんだいヴンダー、急に畏まっちゃって?」

 ヴンダーは何だか申し訳なさそうな表情をしていた。はて、なんか悪い事でもしちゃったかな。

「お前に、精神こころが身体にひっぺがされたって言ったよな。あれは嘘だ」

 ………………え?
 いやいや、待て。何を言ってるんだこのカミサマは? 精神と身体が離れてない……ってつまり、元の身体のままってこと?

「……驚くのも無理はない。いつ言おうか悩んだからな。……だが、もう流石に引っ張りすぎた気がするから、ここでネタバラシと洒落込んだわけだ」
「嘘……って、最初から?」
「そうだ。お前が捕まって、目を覚ましてから」
「――本当か?」
「あぁ、本当だ」

 ……なんてこった、最悪の事態だ。まさか騙されていただなんて。もう誰も信じたく無くなってくる。まず、こいつを殴っておきたい。

「あぁ、だが一言言い忘れていた」
「……なんだ?」
「この空間はちょいと不思議な空間だ。例え肉体があろうとも、精神力が強いか強くないかで勝敗が決定する。……つまりはだな、カミサマである俺が今は強くなっていて、腐っても人間なお前の上位の立場にある……ということだ」

 訳が解らん。どうしてこの状況に封霊銃がないんだろう! さっさとこいつを殴り付けておきたいのに。

「封霊銃ってのが人間に残された数少ないチートアイテムなんだよ。あれを使えば大抵の霊体は封印出来るだろ。それがきっとカミサマのようなものだとしても、だ。……それを悪用したら霊体こっちの世界と人間そっちの世界のバランスが崩れてしまう。それを……最後に悪用したのはソドム・ゴモラだ」


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