ルームメイトが幽霊で、座敷童。

巫夏希

視点B:河上祐希の場合 -肆-


「パラグラフ計画では、それでは食糧難は解決しないと初めに言われている」
「……ならばどうやって解決するつもりなんだ?」
「供給を増やすんじゃなく、需要を減らすのさ」

 ヴンダーがなんだか言葉遊びのような表現をたしなんでいるので少しイラっときた。というか無茶苦茶イラっときた。なぜここに封霊銃がないのか、抗議したくなるほどだ。
 ヴンダーと出会って(ヴンダーをこの世界に降ろして、と言った方が正しいかもしれないが、敢えて今はこちらで言うことにする)結構な時期経ったけど、まだまだあいつの人となり(神となり?)がうまく掴めていない。神憑きはカミサマを降ろして行使する存在なのだからあまり関係ないように思われるが、そういうカミサマと神憑きの蟠りによって連携が上手くいかなかったりするので、そういうのは結構大事だったりする。

「……なんだか解らんが、つまり?」
「供給を増やすにはどうしたらいいか。……答えは簡単だ。物を増やせばいい。なら……物を増やせないし、減っていく状況で需要・供給のバランスを保つには?」
「ま……さか?」
「そのまさかだよ。物を使うヒトを減らせばいい」

 ヴンダーの言った言葉に、はじめ僕は何を言っているのかさっぱり解らなかった。
 物を増やすのではなく、ヒトを減らす。その方法を考えた人間は幾度となく現れただろう。しかし――そんな方法は道徳的に考えて許されない、極めて非道な手段だ。

「……そういう手段を選ばざるを得ないところまでヒトという種は来てしまったのさ」ヴンダーの話は続く。「だが、悲しいことにヒトはそれの正誤の判別がつかなくなってしまったのさ。……まるでパブロフの犬だ」
「パブロフの犬って、ある動作のときにいつも同じことをされていると、ある動作をしたときにそのことをしていないのにされた、と脳が反応してしまうという?」
「そうだ。……例えばだよ、旧約・新約聖書を見ていけば解るが、人間は幾度となくカミから滅亡させられている。ノアとかのは除くがな」

 その言葉に僕は頷く。しかしながら、ヴンダーが言っている言葉に関して、僕はその意味を理解出来ていない。

「つまりだ、人間は幾度となく滅ぼされているのに、自らが滅ぼされる理由を完全に理解している訳ではない。……パブロフの犬と似ているとは思わないか?」
「自らが滅ぼされる理由が完全に理解していない……その時に人間は滅ぼされると思い込む……?」
「そう、パラグラフ計画には書かれていた。俺はそういうの関係ないから知らないけどな」

 だとすると。
 一つ、気になる点が浮上する。
 それは……。

「――計画の手段が気になるだろう?」
「心を読まないでもらえるかな、ヴンダー」
「悪いが今のお前は心……精神体だぞ? 読むなと言われて読まない方がおかしい」

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