ルームメイトが幽霊で、座敷童。
地下の組織の研究所(後編)
中に入ると、そこには一階と同じようにコンクリートの打ち立ての部屋があった。
「さっきと同じような部屋だ……」
「いや、さっきと違う」
祐希の言葉を俺は遮った。……何故なら、そこには一階のとは明確に違う点が一ヶ所だけ存在したからだ。
ボタンがあった。
小さい、円形のそれは壁にあるのではなく。
隠すつもりは一切ないのか、部屋の真ん中にある箱にそのボタンはあった。
「ボタン……?」
「だろうな。隠すつもりもないらしい。逆にすがすがしい」
アドルフさんは溜め息をついて呟いた。
とりあえず、押さなければ始まらないだろう。
「リト、なんとなくお前が押せ」
「ここ重要な場面だよね?」
「あぁ。これが研究所の自爆スイッチで私達全員死んだらお前はとりあえず地獄行きな」
「地獄ってとりあえずという理由で行っていいもんじゃないだろ……」
姉ちゃんのいうことはいつもやりすぎである。異端が束になっても姉ちゃんの異端ぶりには届かないんじゃないだろうか、って思うくらいだ。
まぁ、確かに押さないと話も進まないので、緊張感皆無の俺が押させてもらうこととする。
ぽちっとな。
……さて、押したのだが変化らしい変化が見られない。このボタンダミーとかじゃないよな……?
「壁が競り上がっていく……」
祐希の言葉に俺は振り返った。そこに広がっていたのは、さっきまであった黒い壁が競り上がり、白い一本のラインが浮かんだものだった。
恐らく白いラインは外(この場合は研究所の中、の扱いが正しいだろうか)の光だと思う。あまりにも大仕掛けだ。なんでもかんでも仕掛けが凝ってればいいってもんじゃない。人は注目するだろうが、それが何度も続くとなれば固定客がいなくなるみたいに。
話はずれたが、競り上がりを続けた壁は半分程開いて漸く停止した。
「……ここが」
「ようこそ、ELOと神事警察の諸君」
偉く透き通った声が空間に響いた。
「あんた……誰だ?」
「私は人工進化研究所所長の翠名創理と言います。神事警察が、よくここまで辿り着きましたね」
「……何処に居る」
「おやあなたは雷神の! なるほど、神憑きまで来ている、と……」
見えない声は笑っているように聞こえた。
「いい研究材料が集まりましたねぇ……」
最初、俺は何を言ってるのか解らなかった。
しかし――直ぐに身を持って知ることになる。
ゴバッ!! と。
大量の水が競り上がり切った壁の隙間から流れ出てきた。
「……ちくしょう、罠か!!」
「あぁ、一つだけ言っておくとそれは私達が開発した新素材でね。鉄にプラチナを混ぜた『クロムプラチナ』ってやつだ。いくら神憑きだからって壊すのは不可能だと思うね」
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