ルームメイトが幽霊で、座敷童。
魂と胎児と融合個体 -捌-
「……!」
俺は意識を取り戻した。周りの雰囲気から見てまだ数秒も立っていないらしい。
ツェペリはまだ『俺が無力だということに』なっているし、恐らく他の人間だってその変化には気付いてないと思う。
ならば、チャンスは今だ。今しかない。
(……おい、天照大神)
俺は内界に問い掛けた。
『私のことを呼び捨てにするのは、後にも先にも貴方だけでしょうね、瀬谷理斗』
そんな形式張った堅苦しい挨拶はどうだっていい。
(……『やれるか』?)
問い掛けはこの四文字で充分だ。そして、相手もそれで充分と判断したんだろう。一瞬の沈黙の後、告げた。
『……私は最強のカミ、太陽のカミ。こんなこと造作でもない』
「そうか」
俺は、それだけを確認しておきたかった。
「おい、何をブツブツ言っている?」
残念、もうあんたはボスじゃなくなった。
“ただのモブキャラだよ”。
俺がそれを言った直後、ズン!! と地響きが鳴った。
「な、なんだ……?!」
ツェペリは上を見上げた。馬鹿野郎、上を見てもあるのは木材だけだ。
日本神話最強のカミサマ、天照大神を操る方法。それは……たった一言で充分だった。
「……力の解放を許可する」
『はいよ、任せな。最強のカミの力、見せてやる』
刹那、俺の頭上には焼けつくように熱い太陽があった。
俺の頭上にあるが影響は一切ない。この攻撃はなんだ、と思ったが、
『これは悪しき力を焼き払うもの。それが霊体だけなら霊体のみを。身体も含めてなら、髪の毛ひとつと残さない。……そうですね、技の名前をつけるなら「アマテラス」でしょうか』
その前にあちら側から教えてくれた。別にいいのに技名まで。
「……ぐぁあああ……!」
ツェペリは身体まで悪に染まっていたのか(つまりは乗っ取った身体などではない、ということだ)、身体が燃えていた。
しかし、苦しんでいる様子を見せたのはその僅か数秒で、その後突然に笑い出した。
――気でも狂ったか、と思ったがどうやらそうではなさそうだった。徐々にツェペリの言葉がはっきりとしてきた。
「……はは、天照大神……、日本神話最強のカミを“降ろす”とは、……なるほど。ボスが気に入るわけだ……!」
「……なんだと?」
ボスが気に入る? つまりボスは俺を知っているということになる、それはいったい。
「ボスは……、カミの力を手に入れようとしていた……! つまり『神憑き』はいい研究材料になる! 神降ろしをしても何故耐えきれるのか?! 何故神憑き以外では死んでしまうのか!!」
「……そのためにみずきさんを……!」
「みずき……、あぁ、ドレーンのことか……! あいつはいわば補欠の存在だった! だが神憑きに近い力を持っていたから、普通のカミではない、アブノーマルな『電子のカミ』を降ろさせた!」
アドレナリンが身体中に回っているのだろう。ツェペリの喋りは徐々に大袈裟になってきた。
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