ルームメイトが幽霊で、座敷童。

巫夏希

晴天と飛行機と渡航目的(後編)


 まぁそんな感じでぐだぐだ歩いていると(飛行機の時間はそもそも大丈夫なのか?)、ようやく飛行機の搭乗カウンターに到着した。

「どこ行こうとしてんだい?」

 振り返ると、姉ちゃんが立ち止まってこちらを見ていた。はて、ここじゃないなら……どこ?

「政府関係者専用の特別ラウンジがあるんだよ。さすがに幽霊を乗せる……いや、重要度はカミサマの方が上だが……、霊体をあまり一般人に見せたくないってのもあるんだよ。“霊体かぶれ”ってのがあるくらいだしな」

 霊体かぶれ。
 名前くらいは聞いたことがある。原因不明の皮膚病のことだ。つい数年前迄はその原因が判明出来なかったが、その原因が“霊体を可視出来ない人間が長時間霊体に干渉する(または干渉される)”ことだと解り政府のオカルト関係者が対応に追われることとなった。
 厄介なことに普通の皮膚病と診断されてしまう(医者の殆どが霊体かぶれなど知らないからだ)ために治療はほぼ不可能。強いて言うならば原因である霊体を除霊するしか……ないわけだ。

「……霊体かぶれか。なるほど、確かにそうですね。昔はオカルト関係者も通常の電車、通常の飛行機で移動してましたけど、それが解ってから直ぐに特別便を手配するように……」
「だからめんどくさいんだよね、まぁその分予約漏れの心配がないからな。その辺は楽でいい」

 そんなことを言ってるとラウンジまで辿り着いた。見た目は……そうだな、VIP専用ラウンジにしか見えないな。
 だが、何処と無く……質素に見える。恐らく通常のVIPラウンジとの区別をつけているためだろうな。

「三名、ドイツのハンブルク空港まで」

 姉ちゃんはもう手続きを開始していた。

「了解しました。なるべく早く到着したほうがよろしいですか?」
「うーんそうだね。出来ればそっちのほうがいいかなぁ」
「かしこまりました。零番ゲートより入場してください。直ぐに出発します」

 そう言ってカウンターの人はチケットを三枚俺達に渡した。見た目は普通のと変わりないように見えるんだが……。

「さて、行くかね。あ、そうそう。ハンブルク空港まで“十分、最高速度マッハ二十五”だから。酔い止めは今のうち飲んどけ。あと、機内食なんてもんは出ないからそのつもりで」

 ……なんだよ、そのオーバーテクノロジーは……。

「三年前秘密裏に開発されたものだ。最強だろ。ちなみに最高速度マッハ二十五ってのは僅かコンマ数秒しか出ないからだいぶ貴重だぜ? 少しくらい経験するのもよかろう」
「いやいやいやいや! わけわかんねーって! なんでそうなんだよ!」
「経験は力なり! さぁ行くぞ!」
「いやだあああぁ……」

 無理矢理姉ちゃんに引きずられ俺は零番ゲートへ向かう。因みに祐希はゆっくりと歩いているようだが、その笑顔はひきつっていた。
 そして、それぞれの想いを胸に俺達を乗せた飛行機は空に飛び立った――。



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