桜舞う丘の上で

りょう

第58話 一途な想い

           第58話 一途な想い

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あれからどれ位の時が経ったのだろうか?さっきまで夜だったのに、今はすっかり日が昇っている。僕は…。
(そっか、僕走り疲れてここで寝てたんだっけ)
そこは以前桜と一緒に寝てしまった場所。何でこんな所で…。
(いきなり、桜島を出たいとか言い出すから悪いんだ)
気持ちは痛いほど分かる。でもやっぱり、許せないんだ。あんな言い方されてまで僕はついて行きたくないし、秋久さん達の気持ちを改めて考えると、やっぱり反対だ。だからついつい怒ってしまったんだ。そして僕は彼女に手を出そうとしまった。何で馬鹿な男なんだろう僕は…。
「ああもう!」
誰にもぶつけられないこの怒りは、どうすればいいのだろう。しかも今日は、凛々と愛華が帰ってしまう日だ。見送りにいかなければならないのに、こんな事件を起こしてしまうなんて…。今頃皆は何をやってるのだろうか?帰ってこない僕を探しているのだろうか?でも今僕は宮崎家に帰らないつもりでいる。今帰ってしまったらきっと…。
「結心さん、こんな所にいつまでも居たら風邪ひきますよ?」
一人海を眺めながら黄昏ていると、誰かが後ろから声をかけてきた。その人物は、今僕が一番会いたくない人。
「わざわざ探しに来てくれたんですか? 夏美さん」
僕は振り向かずに答える。
「桜があなたが帰ってこないって心配して、昨晩から泣いていて、探せる様な状態じゃなかったので、私が代わりに探しに来たんですよ」
「心配してる? あんな言い方したのに?」
「何を勘違いしているか分かりませんけど、桜は一度好きになった人は必ず嫌いにならない性格なんですよ」
「え?」
夏美さんの言葉に思わず振り向いてしまう。
一度好きになった人を…。
「桜から少し話を聞きましたが、結心さんが怒るのもよく分かります。確かにあの子の言い方が悪かったのかもしれません。それについては、ずっと謝っていました。けれどもあれは結心さんと一緒に居たいが為に言った、半分本音で半分冗談の話なんですって」
「僕と一緒に居たいが為に?」
「はい。先ほども言った通り、あの子は昔から一途なんですよ。それがいい事でもあり、裏目に出てしまうととんでもない誤解を生んでしまうんですよ。あの子は昔からその事でずっと悩んでいたんですよ」
「そう…何ですか…」
じゃあ僕はとんでもない勘違いをしていたって事だ。おまけに手まで出そうとしていた。最低だ僕は…。
「あの夏美さん、桜は今どこに?」
「自分の部屋にこもっています。もし何か言いたい事があるならば、今しかないのでは?」
「ありがとうございます。夏美さん!」
「行ってらっしゃい」
僕は再び走り出していた。
何で僕は気づけなかったんだろうか? 彼女の一途な想いに。
守るって決めたのに、僕自身から裏切るなんて…。
変わったなんて嘘だ。
僕はまだ何一つ変われていないんだ。
                     第59話 これから始まる へ続く

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