桜舞う丘の上で

りょう

第56話 二人だけの時間in夏祭り

        第56話 二人だけの時間in夏祭り

1
説教で無駄に時間を使ってしまった為に、肝心の夏祭りを楽しむ事が出来てないような気がする。その原因はどう考えても、あれしかないんだけれど、当の本人は居ないわけで。
「はぁ、足痛い」
正座の時間が長かったからか、足が痛くて歩く事が出来ない。和樹は何も無かったかのように歩いてるから羨ましい。僕ももっと筋力を付けた方がいいのかもしれない。
「どうしたのゆーちゃん」
そんな事を考えながら、ベンチに座って足をほぐしていると、桜が後ろから話しかけてきた。
「足が痛いんだよ。あんな所で正座したから」
「それはゆーちゃん達が悪いんじゃないの」
「いや、悪いとかの問題じゃないと思うんだけど…」
改めて振り返ると、僕はただ夏祭りを楽しんでいただけだから、怒られる意味が分からないけど、まあいいかな…。
「でもさ、やっと二人きりになったね」
「あ、言われてみれば」
僕がこうして休んでいる間、和樹はゆり達と会場を回っているので、この場に居るのは桜と僕だけ。
「折角二人きりになったから、一緒に回ろうか?」
「うん。私ゆーちゃんに奢ってあげる」
「え? 本当に?」
「お面ぐらいなら」
「いやそんなの奢って欲しくないんだけど」
「えー」
僕達は手を繋ぎ、再び屋台を回り始めた。
2
「ゆーちゃん、これ奢ってー」
「あれ? さっきは奢ってくれるって言っていなかったっけ?」
「だから奢るのはお面だけだって」
「あれ本当だったの?」
「当たり前じゃない」
「いや、当たり前なの?」
屋台を前にそんな会話を繰り広げる僕と桜。こんな会話でいいのだろうか?
「まあ、奢ってあげるけどさ」
「本当?」
「うん。折角のイベントだし」
「ありがとうゆーちゃん」
「礼を言われるほどでもないよ」
嬉しそうな顔をしている桜に、僕は思わずドキッとしてしまう。それと同時にさっきまで考えていた事が一気に吹っ飛んだ。桜がこんなに笑顔なんだから問題はないのかもしれない。二人きりでこうして何かを楽しむなんて滅多にない事だし、これからもそれが続いてくれる事を願っている。
たとえ僕達にどんな運命が待ち受けていようとも、僕は彼女の側から離れる事は絶対にない。
僕は桜が好きなのだから。
「どうしたの? さっきからボーッとしてるけど考え事?」
「え? あ、いやまあ、ちょっとね」
「ちょっとって何よ?」
「別に何でもないよっと」
「あー、ちょっと。それ私が食べようと思っていたのに」
「へへーんだ」
「ううっ、酷いよぉ」
彼女と一緒に今を過ごしているのが、今の僕にとって唯一の幸せでもあるのだから。
              第57話 当たり前ではない事  へ続く

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