桜舞う丘の上で

りょう

第54話 浴衣

               第54話 浴衣

1
とりあえず騒ぎは収まったので、今日の夏祭りについて説明。
「な、なにぃ? 俺がこの三人の面倒を見ろだってぇ」
「いや、そんな言い方はしてないけど」
当然和樹以外からも反発が飛んでくる。
「ちょっと結心、それは幾らなんでもひどい話じゃない。何の為に私達ここまで来たと思っているのよ」
「お兄ちゃん、最低ー」
「ゆーちゃん、それはあまりにも酷いですよ」
「いやあのさ…。折角の夏祭りなんだから、桜と過ごしたいなぁって…」
まあ炎上するわするわで、かれこれ一時間、僕は四人から(和樹を含む)説教される羽目に。
「分かったからさ許してよ…」
流石にこのままでまずいと感じ、僕は皆で行動する事を決断。桜は何かを言いたそうにしていたけど、僕はそれに対して、どう反応すればいいのか分からなかった。
2
夜に再び集合することを約束して一旦解散。凛々と愛華は花火がやりたいと言い出し、買い出しに出かけ、桜は夏美さんに何かを頼みに行った。その為、久々に僕は一人になった。
(ああ、しんどい…)
まさかここまで酷くなるとは思っていなかった。正直夏祭りがどうなるか心配だし、これ以上四人の仲が悪化してほしくない。
これも全部僕のせいなのだろうか?
(でも決めたのは、僕自身の意志なんだから、誰が悪いとかそんなのあるはずがない)
それでも何かが引っかかってしまう。これは一体なんなのだろうか?そんなの分からない。誰に聞いても分かりやしない。僕自身の事は僕自身しか分からないのだから。

「ゆーちゃん、入っていいかな?」
一人でそんな事を考えていると、部屋の外から声がした。桜だ。
「いいよ」
僕が返事をすると、ゆっくりと扉を開けて桜が入ってきた。
「っ!!」
入ってきた桜を見た瞬間、僕は彼女の姿に言葉を発することができなかった。
何故なら彼女は…。
「似合うかな…?」
彼女は浴衣姿だった。
僕はそのあまりに華麗な姿に、何にも言うことができない。
「お母さんに手伝ってもらったの」
「そ、そうなんだ…」
髪を上で束ね、少しお化粧をした顔。そして何と言っても彼女にはピッタリの浴衣。その全てが僕の心を奪っていった。
何て美しい姿なんだろうか。
「ちょっとぉ、さっきからジロジロ見てないで何か言ってよ」
「あ、ご、ごめん。可愛いよ桜」
「本当に?」
「う、うん。本当に可愛いよ」
「ありがとうゆーちゃん」
本当はもっと褒めてあげたいけど、それ以上の言葉が今の僕には出てこない。こんなに綺麗なのに、それ以上の言葉が出ないなんて情けないけど、本当なんだから仕方がない。
幸せだなぁ僕。
「って、もうこんな時間じゃない」
「え? もう?」
ほんわか状態だった僕は、桜の声で現実に戻る。何だかんだで時計は五時を回っていて、もうすぐ集合時間だ。
「でも凛々と愛華は帰って来てないよ?」
「大丈夫よ。あの二人ならもう向かってるから」
「え?」
「私が花火を買いに行くように頼んだの。買ったらそのまま集合場所へ向かっていいって言っておいたし」
「あ、そうなんだ」
あれだけ嫌っていた割には、頼っちゃってんじゃん。二人も承諾して向かっているわけだし。このまま仲良くなってくれればいいんだけど。
「ほら行こうゆーちゃん」
「行くって、僕まだ着替えていないんだけど」
「そんなの気にしなーい」
「いや気にしてよ」
結局僕は、着替えることが出来ず、桜に連れられて集合場所へと向かった。
(あ、今僕達手を…)
小さな幸せを感じながら。
                                                        第10章 完
                第55話 男の夏祭り三本勝負 へ続く

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