桜舞う丘の上で

りょう

第53話 迷いなき心

                 第53話 迷いなき心

1
嵐が去った後の部屋、僕は桜を部屋に残した。一応彼女にだけは伝えておかなければならない事があったから。
「あのさ桜」
「ん? 何?」
「さっきの夏祭りの話なんだけど…」
「夏祭りがどうしたの?」
「よかったら僕と行ってほしいんだけど」
幼馴染とかも大切だけど、何より大切なのは彼女なので、夏祭りがあると聞いた時は、必ず桜を連れて行こうと決めていた。友人部の皆も居るから、完全に二人きりになるわけにはいかないけど、彼女とできる限り側に居たいと決めたんだから。
「え? 本当?」
さっきまで少し疲れていた彼女の顔が、一気に明るくなる。
「当たり前だよ。好きな人を無視して、他の人と行動するわけにはいかないじゃん」
「ゆーちゃん」
「僕にとって凛々や愛華も大切な存在なのは事実だけど、それよりも桜が大切だよ。だって…」
「だって?」
あ、今僕言ってはいけないことを言おうとしてしまった。僕が彼女を放っておけない理由の一つは、恐らく彼女には知ってほしくない事だ。安易に発してしまうと、何が起きてしまうか分からない。
「あ、いや。何でもない」
「? 変なの」
とりあえずこれで、桜と夏祭りを共にする約束はした。これが僕と桜と二人で作る初めての思い出。そしてすべての始まりでもあった。
2
翌日、友人部は桜の家に集まった。勿論凛々と愛華もいる。
「へぇ、こいつらがお前が話していた幼馴染か」
「初めまして二人とも」
「どうも、結心の幼馴染の凛々です」
「妹の愛華です」
「あれ? 私と会った時とまるっきり態度が違うじゃない」
「当たり前じゃない。あなたは私にとって、恋敵なんだから」
「結心お兄ちゃんは渡さない!」
「いや、渡さないって…」
まだ続くのかなこの修羅場。しかもこの場にもう一人…。
「ゆーちゃんは私のものですよ!」
「なっ!」
「えっ!」
厄介なのが居たんだよな…。
「ちょっといきなり何を言い出すの? ゆーちゃんは私と付き合ってんの。理解できるわよね?」
「理解出来ません」
「んなっ!」
思わず声をあげたのは僕。
理解できてないって…。
「確かに私は振られましたけど、決して諦めてませんから!」
「あなた面白い事言うわね。どうやら同志みたいだけど、敵は敵よね」
「当たり前じゃないですか」
「お兄ちゃんは私のものなんだから」
あー、何とかならないかな。このTHE 修羅場lev2。僕にはどうにも出来ないレベルに達しちゃってるよこれ…。
「なあ結心」
そんな争いを眺めながら和樹は声をかけてきた。
「何?」
「お前も色々大変なんだな」
「うん」
本当にその通りです。
                                        第54話  浴衣 へ続く

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