桜舞う丘の上で

りょう

第50話 家族

                        第50話 家族

1
その後まだ泣き続ける桜を引き連れて帰宅。入口には秋久さんと夏海さんが待っていてくれた。
「お、おい桜。一体何があったんだ?」
「それは僕が説明します」
僕は先程まであった事全てを説明した。それを聞いた夏海さんは、思わず倒れこんでしまう。
「ごめんなさい桜。私が黙っていなければ…」
「馬鹿、お前の責任じゃねえ。これは俺達家族の責任だ」
うーん、すごく居づらい。
桜はまだ泣いているし、こんな状況に居る僕は一体、何をすればいいのだろうか?
(とりあえず、落ち着くまで待つとしようかな…)
僕はこの状況の中で、ずっと桜の側に居てあげた。それを感じ取ったのか、彼女は僕に体を預けずっと泣き続けていたのだった。
2
時間は過ぎていき、すっかり夜になってしまった。とりあえず皆が落ち着いたので、話し合いを始めた。
「なあ桜、お前はあの話を聞いてしまったんだよな」
「うん」
「辛かったよな?」
「うん」
「でもそれが真実なんだ」
「分かってるよ。でもそんなの簡単に受け入れられない」
「それはそうだ。それに関しては一言も言えない。だが俺達からこれだけは言わせてくれ」
「何?」
「血が繋がってなくても、どんなにお前が俺達に失望しようと、俺達は家族だ。十八年共に生きてきた大切な家族なんだ。だから、その事は忘れないでくれ」
「お父さん…」
「そうですよ。私達はどんな時でも立派な家族なんですから。勿論結心さんも含まれてますからね」
「お母さん…」
そして桜は再び涙目になった。まあ、今の言葉を聞いたら泣きたくなるよね…。
「うわぁぁん」
桜はまた僕に抱きついて、泣きじゃくってきた。僕はそれを再び優しく受け止めた。人のこと言えないけど、桜も泣き虫だよな…。
(でもまあ、これで解決…かな?)
桜の中ではまだ整理がついていないかもしれないけど、連日続いたゴタゴタは今日ようやく落ち着いた。
(これでもう、何も起きなければいいんだけど)
3
それから二週間が経ち、夏休みも後半になったある日、僕は船着場である人物が乗っている船を待っていた。
『今週末、桜島に遊びに行くから』
この数日前、僕の携帯にこんなメールがきた。誰からなんて、送信主を見なくたって分かる。
「やっぱり来るんだね、凛々と愛華」
帰省した際に遊びに行くと言っていた人物、凛々とその妹である愛華が本日、二泊三日で桜島に遊びにやってくるのだ。
「早く来ないかな…」
僕は親友がやって来るのをドキドキしながら待っていた 。
                                                       第9.5章 完
                     第51話  やって来た姉妹 へ続く

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