桜舞う丘の上で
第49話 追いついて追い抜く
    第49話 追いついて追い抜く
1
僕は桜が行きそうなありとあらゆる場所を探し回った。でも、見つかる気配がない。
(僕のせいだ…)
あんな秘密を僕は知ってしまったから、桜が傷つく事になってしまった。いや、傷ついたってレベルじゃないかもしれない。だって彼女には…。
(とにかく探さなきゃ)
かれこれ桜島にやってきて四ヶ月が経つ。その間さくらは常に僕の側に居てくれた。いつでも支えてくれた。それなのに、僕は彼女に何かしてあげられただろうか?いや何も出来ていない。僕は彼女を傷つけてばかりだ。
(それなら…)
それなら今度は彼女を助ければいいんだ。簡単にはこの過酷な運命を受け入れられるはずがない、だったら僕が彼女を支えてあげればいいんだ。いつの間にか追っていた彼女の背中に、追いついて追い抜かさなければ。僕は一人の…
一人の男なのだから
2
更に探し回る事一時間、一向に見つかる気配がない。
(最後はここか…)
探す場所はついに最後となった。そこは、桜島南東にある小さな丘だった。ここに居なければ…。
(誰かいる…)
丘を登りきったところにある一本の木の下に人影が見えた。
「こんな所に居たの桜」
勿論それが誰なのかはすぐに分かった。
「ゆーちゃん…」
木の下でうずくまって泣いている桜。僕は彼女の側にゆっくりと近づいていき、隣にそっと座った。
「私これからどうすればいいのかな?」
「どうすればって?」
「正直私、あの話をすぐには信じられないの。というより、信じたくないよ」
「分かってるよ。僕だって信じられないし」
「だから本当は、桜島を出て行こうかなと思った。でもね…」
ここで言葉を詰まらせる桜。涙を堪えているのだろうか。僕は彼女が喋るまで静かに待つ。
「私…やっぱりここが好きなの。ここから離れるなんて…考えられない」
「桜…」
「たとえ血が繋がっていなくても、私お父さんとお母さんの側から離れたくない」
これが桜の秘密。桜と彼女の両親は血が繋がっていないのだ。僕が見たあの写真は、桜誕生の一ヶ月前の写真だったのだけれど、夏海さんのお腹は大きくなかった。これだけで充分分かった。普通なら出産一ヶ月前になると、お腹は大きいはず。でも夏海さんのお腹は全く大きくなかった。つまり、彼女は子供を産んでいない事になる。つまり、彼女と二人は血の繋がらない親子なんだ。
「ねえ桜、一つだけ聞いていい?」
「何?」
「桜は二人の事好きだよね?」
僕は当たり前の事を聞いてみた。それに対して桜は…。
「嫌いなわけないでしょ? 私の大切なお父さんとお母さんだもん」
と笑顔で答えるのだった。
                                         第50話 家族 へ続く
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僕は桜が行きそうなありとあらゆる場所を探し回った。でも、見つかる気配がない。
(僕のせいだ…)
あんな秘密を僕は知ってしまったから、桜が傷つく事になってしまった。いや、傷ついたってレベルじゃないかもしれない。だって彼女には…。
(とにかく探さなきゃ)
かれこれ桜島にやってきて四ヶ月が経つ。その間さくらは常に僕の側に居てくれた。いつでも支えてくれた。それなのに、僕は彼女に何かしてあげられただろうか?いや何も出来ていない。僕は彼女を傷つけてばかりだ。
(それなら…)
それなら今度は彼女を助ければいいんだ。簡単にはこの過酷な運命を受け入れられるはずがない、だったら僕が彼女を支えてあげればいいんだ。いつの間にか追っていた彼女の背中に、追いついて追い抜かさなければ。僕は一人の…
一人の男なのだから
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更に探し回る事一時間、一向に見つかる気配がない。
(最後はここか…)
探す場所はついに最後となった。そこは、桜島南東にある小さな丘だった。ここに居なければ…。
(誰かいる…)
丘を登りきったところにある一本の木の下に人影が見えた。
「こんな所に居たの桜」
勿論それが誰なのかはすぐに分かった。
「ゆーちゃん…」
木の下でうずくまって泣いている桜。僕は彼女の側にゆっくりと近づいていき、隣にそっと座った。
「私これからどうすればいいのかな?」
「どうすればって?」
「正直私、あの話をすぐには信じられないの。というより、信じたくないよ」
「分かってるよ。僕だって信じられないし」
「だから本当は、桜島を出て行こうかなと思った。でもね…」
ここで言葉を詰まらせる桜。涙を堪えているのだろうか。僕は彼女が喋るまで静かに待つ。
「私…やっぱりここが好きなの。ここから離れるなんて…考えられない」
「桜…」
「たとえ血が繋がっていなくても、私お父さんとお母さんの側から離れたくない」
これが桜の秘密。桜と彼女の両親は血が繋がっていないのだ。僕が見たあの写真は、桜誕生の一ヶ月前の写真だったのだけれど、夏海さんのお腹は大きくなかった。これだけで充分分かった。普通なら出産一ヶ月前になると、お腹は大きいはず。でも夏海さんのお腹は全く大きくなかった。つまり、彼女は子供を産んでいない事になる。つまり、彼女と二人は血の繋がらない親子なんだ。
「ねえ桜、一つだけ聞いていい?」
「何?」
「桜は二人の事好きだよね?」
僕は当たり前の事を聞いてみた。それに対して桜は…。
「嫌いなわけないでしょ? 私の大切なお父さんとお母さんだもん」
と笑顔で答えるのだった。
                                         第50話 家族 へ続く
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