桜舞う丘の上で

りょう

第47話 違和感

                      第47話 違和感

1
僕は夏海さんにアルバムを借り、午後の間ずっと眺めていた。
(本当、こうして眺めていると…)
あの話がまるで嘘のように思えてしまう。でも事実なのだから、仕方がない。
(あれ? 一枚桜の生まれる前の写真が混ざっているな)
それは彼女が生まれる少し前の、秋久さんと夏海さんの写真だった。
(相変わらず夏海さんは綺麗だなぁ)
その写真の夏海さんは今と変わらず、綺麗だった。秋久さんは馬鹿みたいな顔をしている。本当に幸せそうな写真だ。
(ん?)
でも僕は、その写真に違和感を感じた。何だろう、この嫌な予感は。
(!?  まさか…)
そんな事はあり得ないはずだ。僕の気のせいかもしれない。でもどう考えても…。
(こんな事って…)
どうやらこの家にはもう一つ、重大な秘密があるようだ。でもそれは、僕が知っていいものだろうか。いやよくない。こればかりは、黙っているしかない。これ以上知ってしまうと、何も知らない桜があまりにも可哀想すぎる。
これから僕はどうすれば良いのだろうか?
これからどうすれば…。
2
それから三日後、桜の体調も良くなり普段通りの生活に戻り始めた。
「ごめんねゆーちゃん、折角の合宿だったのに、台無しにしちゃって」
「いやいいんだよ。桜の体調の方が心配だったし」
「そう。ならよかった」
静かに微笑む桜。でも彼女は、どこか悲しそうな目をしていた。責任でも感じているのかな…。
「あ、そうだ桜」
「何?」
「桜って誕生日いつだっけ?」
「誕生日? 十二月二十五日だけど、どうして?」
「ちょっと聞いてみたかっただけだから、心配しないで」
「あ、うん…」
やっぱりあの写真らおかしいぞ。でもこれを桜が知ったら、彼女の精神が壊れてしまう。だから黙っていなければ…。
「おい結心、ちょっと話があるんだが」
桜と雑談をしていると、途中で秋久さんに呼ばれた。
「話ですか?」
「ああ。かなり重要な話だから、すぐに来い」
「は、はい」
まさかあちらに気づかれた?
このままだと、僕はこの家に居られなくなるのではないか?不安だ。ものすごく不安だ。
「話なら私も聞こうか?」
「いやお前はいい。というよりは、こいつにとってかなり大切な話だから、お前は聞く必要ない。分かったか?」
「あ、うん…」
そこまで言わなくてもいいんじゃないかと思うけど、こればかりは仕方がない。僕は踏み入れてはいけない所まで踏み入れてしまったのだ。だから…。
「おい行くぞ」
「はい」
どんな罪が待ち受けていようと仕方がないんだ。僕は…。
知ってはいけない事を知ってしまったのだから。
                              第48話 親として へ続く

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