桜舞う丘の上で

りょう

第45話 月明かりが二人を照らす

       第45話 月明かりが二人を照らす

1
「そんな事があったんだ…」
「うん」
「ゆーちゃんはそれでよかったの?」
僕と桜は近くのベンチに座りながら、ゆっくり話をした。流石にあれを全部話すと、長くなりそうなので少し省いたりはしたけど。
「よかったんだよ。僕は桜の事が好きなんだし、それにこれをキッカケに二人とは元の状態に戻れたんだから」
「そっか…」
再び静かになる。今日はやけに静かな夜だ。鈴虫の鳴き声しか聞こえていない。
スー スー
いや、もう一つだけ聞こえている。桜の寝息だ。静かになっている間に、いつの間にか眠ってしまったらしい。
(寝ちゃったか…)
このまま起こすのも可哀想なので、どうやら今日はここで寝る事になりそうだ。普通ならあり得ない話だけど、桜島ならそんな事も許されてしまう。なんて不思議な所なのだろうか。
(こんな状態だけど、僕にとってはすごく幸せな事なんだよね…)
今は僕の側には好きな人がいる。僕の想いは今日初めて叶ったんだ。それだけでも僕は、幸せなんだ。
まあ、これから何があっても守ってみせなきゃ桜を。
たとえ力がなくたって、僕は守らなきゃ。
大切な人を守らなきゃ!
2
いつの間にか眠ってしまっていた僕は、次目を覚ますとすっかり朝になっていた。桜は…まだ眠っている。
「桜、朝だよ」
「んっ…ゆー…ちゃん?」
「昨日ここで寝ちゃったんだよ。早く戻ろう」
「あ、うん…」
まだ眠たそうな顔をしている桜を引き連れて部室へ戻る。
「よかった、誰も起きてなかった」
和樹もゆりもまだぐっすり眠っているので、ホッと一安心。それもそのはず、時間はまだ六時過ぎだった。
「ねえゆーちゃん」
「どうした?」
「私何か熱っぽい…んだけど…」
「え?」
それと同時に倒れる音が聞こえる。慌ててそちらを向くと、桜が倒れていた。
「さ、桜!」
僕は慌てて駆け寄り、おでこに手を当てる。うわっ、すごい熱だ。昨日外で寝たのが原因かもしれない。
「急いで家まで運ぼう」
僕は桜を担いで、急いで宮崎家へと向かった。
3
「でお前は、桜を起こさずにその場で眠ったんだな」
家に戻り桜を落ち着かせた後、僕は秋久さんにリビングに呼ばれた。
「はい、そうですけど」
「馬鹿野郎!! あいつはああ見えて、本当は病抱えてんだよ!」
「え?」
そんな事一言も聞いた事ないんですけど。第一体育祭とか普通に参加してましたけど。どう考えたって…。
「いいか、あいつはな…」
この後僕は、秋久さんからとんでもない事実を聞かされる事になってしまう。
「そんな…」
                                                        第9章   完
                              第46話 彼女の側に へ続く

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