桜舞う丘の上で

りょう

第44話 一瞬だけ止まる時間

            第44話 一瞬だけ止まる時間

1
「分かった、教えるよ」
「ほ、本当に?」
「うん」
ずっと話せなかったこの気持ち。宮崎家にお世話になってから、ずっと感じていたこの気持ち。
僕は今、彼女に伝えようと思う。
「僕が好きな人はね…」
「うん」
ああ、緊張する。でも僕は、自分の素直な気持ちから逃げたりしない。
「桜なんだ」
「え? 私?」
「うん。僕はずっと前から桜の事が好きになっていたんだ。他の誰よりも…」
「ゆーちゃん…」
ふと彼女と視線がぶつかる。こうして彼女の目を見るだけでも恥ずかしくなってるという事は、本当に僕は桜が好きなんだな…。
「だから僕と…もしよかったら、付き合ってください。同じ家で暮らしているけれど、それとは関係なく本当に僕と…」
と、その瞬間口に何か暖かいものを感じた。そして、近くには桜の顔が…。
これって…キス?
一瞬だけ時が止まり、僕と桜は今キスをしている。その一瞬の時は僕にとって、どれだけ幸せな時間だっただろうか。いつまでもこの時が続けばいいと思ってしまう。
まあ、そんな事は叶わないけど。
桜はゆっくりと唇を離し、笑顔でこう言った。
「これが私の答えだよ、ゆーちゃん」
「桜…」
その笑顔は今まで見た彼女の笑顔の中で、一番綺麗で僕はつい心を奪われてしまった。
「私もゆーちゃんの事が好きだよ
、誰よりも」
2
告白タイムが終わり、部室に戻ろうかと思ったけど、
「ねえもう少し散歩しない?」
と桜が言うので、もう少し散歩する事に。ただ…
(な、何を話せばいいの?)
今までは普通に話せていたのに、急に恥ずかしくなってしまった。何かこういうの慣れてないから、どうしても…。
「ねえゆーちゃん」
そんな沈黙の時間を破ったのは桜だった。僕はちょっとドキッとしてしまう。
「な、何?」
「私に何か話してない事があるでしょ?」
「え? 別にないけど」
「嘘つかないでよ。帰省した時、両親の事以外に本当は何かあったでしょ?」
ああ、それか…。
確かに僕は桜に一つ話していないことがあった。
それは凛々と愛華の事。僕は二人に対して、しっかりとした答えを出して、五年間途切れていた一つの繋がりを復旧させる事ができた
。全て解決したからいいかなと思っていたけど、やっぱり話しておくべき事なのだろう。
「どうして何かを隠しているのか分かったの?」
「予定より一日長かったからかな居たくない場所にわざわざ長居する必要ないから」
「まあ、それはそうだけどね」
「それで帰省した時に何かあったの?」
「うん。あったよ」
「やっぱり…。良かったら教えてくれないかな」
「分かった。長くなるけどいい?」
「大丈夫。まだ眠くないから」
「じゃあ、話すよ…」
         第45話 月明かりが二人を照らす へ続く

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