桜舞う丘の上で

りょう

第43話 守れない約束と涙

             第43話 守れない約束と涙

1
そこからしばらく沈黙が続く。
(この空気が気まずいんだよな…)
たとえ小さい頃の約束だったとはいえ、彼女はずっと僕を好きでいた。約束が果たされる日を彼女は待っていたんだと思う。僕はそれを…。
「やっぱりそうだったんですね…」
「え?」
「ゆーちゃんは桜ちゃんの事が好きなんだよね。だから、私の気持ちなんか…」
「それは…」
「馬鹿らしいですよね、小さい頃の約束なんてアテにして。結局約束は約束だけにすぎないんですよね」
何も言えない。彼女の言っている事は正論だ。約束は約束に過ぎない。だから、それが確実に叶うわけがないのだから…。
「やっぱり私なんかは桜ちゃんに敵うはずがないんですよ。私みたいに何にも取り柄がない人間なんかには…」
いつの間にか涙声になっているゆり。こんな時に僕は彼女に、なんて声をかけてあげればいいのだろう。
「ゆーちゃん、ゆり。いつまで残って…」
と、このタイミングで桜が僕達を迎えにきた。
「って、二人とも何があったの!」
タイミング悪すぎるよ桜…。
2
結局何とかその場をしのいだんだけど、ゆりの様子は全く変わっておらず、夜にやる予定だった花火は中止。風呂だけは済ませ、後は眠るだけになった。
「あれ? ゆーちゃん? 寝たと思っていたけど、起きてたんだ」
「うん」
ゆりと和樹は早めに眠ってしまい、今起きているのは僕と桜だけになった。
「ねえゆーちゃん」
「何?」
「さっきは誤魔化したけど本当は何かあったんでしょ?」
やっぱり見抜かれてたか…。まあ
、あんな誤魔化方じゃあダメだよね…。
「うん、まあ…」
「よかったら話してくれないかな?」
「構わないけど、あまりゆりとかに聞かれたくないから、少し散歩しながら話さない?」
「分かった」
この話を部室内でしたら確実にゆりが可哀想になる。それだけは何とかしてあげたい。だから僕は桜と共に海岸を散歩しながら、先程の話をする事にした。
「え? ゆりがゆーちゃんに告白したの?」
「うん」
「そうなんだ…」
更に話を進める。勿論僕が彼女を振った事も話した。
「何で振ったのよ。信じ続けてきたゆりが、あまりにも可哀想じゃない」
「分かってるよ。でも僕には、そう答えるしかなかったんだよ」
「どうして?」
「だって、僕には今好きな人が居るから!」
「え?」
「あ」
あっ…。つい勢いで言ってしまった。でも桜が好きなのは言ってないから大丈夫…。
「す、好きな人が居るの?教えてよ!」
な訳ないよね。
さて困った事が起きたぞ。ここで誤魔化して逃げるのか、それとも気持ちを伝えるか…。
(いや、決まってるか…)
ここで逃げるぐらいなら、僕は自分の気持ちをぶつけた方が絶対にいい。当たって砕けても構わない。だって…。
初めて人に好きって言えるチャンスなのだから。
               第44話 一瞬だけ止まる時間 へ続く

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