桜舞う丘の上で

りょう

第35話 あの時の答えを

               第35話 あの時の答えを

1
風呂から出ると、凛々だけでなく愛華も起きていた。
「あれ? 愛華起きてたんだ」
「私が起こしたの。私だけが聞くんじゃ駄目でしょ?」
「ま、そうだね」
二人はリビングのソファに座って、夜食を食べている。
「夜食は体に良くないよ?」
「分かっててもお腹が減っちゃったんだもん」
「お姉ちゃんは毎晩食べてるよね?」
「う、うるさい」
どうやら重い空気の中で話す必要ないようだ。よかった…。
「それで結心、さっきの話の続き、四年前あなたが出せなかった答えを出してくれるんでしょ?」
「うん」
もうあの時みたいに僕は逃げたりしない。
桜島での出会いが僕を変えてくれた。
僕に前を向く勇気を与えてくれた。
「ちゃんと出すよ。僕なりの答えを」
2
一瞬空気が静まり返る。二人とも話をちゃんと聞くつもりだ。
僕は一つ深呼吸をして、ゆっくりと口を開いた。
「あの時二人に告白された時は流石にびっくりした。それと同時に、自分はこの後どうすればいいか不安になった。どちらか選んだら、どちらかが不幸になってしまうんじゃないかって」
「それは違うよ。私達はあなたがどんな答えを出しても不幸になんてならない。結心が決めた事、それが結心自身の本心だと分かっていたから」
「うん。それは僕もうっすら分かっていた、でもやっぱり怖かったか。だから逃げ出した」
「まさか結心お兄ちゃんが転校するなんて思っていなかった。高校生になって、別々の高校に通っていたけど、時々話を聞いていたから…」
「でも僕は、自分が逃げ出した事に罪悪感を覚えていた。こんな結末を誰も望んでいなかったから。それでも逃げる事にしたのは、もうここに居場所を見つけられなかったから。凛々や愛華を失って、お父さんとお母さんには見捨てられて、いじめられて。そんな所に居たくなる訳がない」
「それはそうだけど…」
僕は立ち上がり、二人に背を向けた。
ここから僕が言う事は二人にとって辛い事かもしれない。だから僕は、二人の目をまっすぐ見る事が出来なかった。
「桜島に逃げた僕は、自分を変えたいと思った。自分の人生を零から始めようと思った。だから僕は…」
僕はもう一回深呼吸する。
よし、言える。
「友人部の皆と出会って、人を勇気づけ、僕自身も勇気づけられた。そして僕は初めてそこで…」
「そこで?」
「恋をしたんだ。桜という女子に」
「「え?」」
「僕は二人の気持ちには答えられない。僕には今好きな人がいるんだ」
これが四年間出せなかった彼女達の気持ちに対する僕の答え。
                          第36話 零から始める へ続く

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