桜舞う丘の上で

りょう

第28話 親の優しさと再会

             第28話 親の優しさと再会

1
昼頃、僕はまだ少しだけ残っていた荷物をまとめ、家の門の前まで来ていた。あと一歩を踏み出せば、この家とは一生さよならになる。
「ねえ結心、本当にいいの?」
「ごめんお母さん。もう決めたんだ」
何度も何度も聞いてくる母さんに、背を向けたまま答える。
見送りには母さんと珍しく父さんが来てくれた。見送りと言っても、家の敷地内だけど。
「お前が決めた道だ。俺達はもう何も言わない。あとは自分でがんばるんだな」
「分かってるって」
もうこれ以上会話をする事がないので、僕は家から出ようと、一歩を踏み出した。
「じゃあね、父さん、母さん」
もう振り向かない。これでもう会う事はないのだから…。
「結心」
最後に母さんが僕の名前を呼んだ。何だろうか?
「あなたは言ったかもしれないけど、お母さんとお父さんは、あなたと縁を切るなんて一言も言ってないからね」
え…。確かに一度も言ってないけど、もう僕を家に入れる気はないはずだよね?縁を切るんだか…。
「だからいつでも帰って来なさい」
「!?」
どうしよう…。最後にもう一回顔を見ておきたい。もう会えないはずなんだから…。でも、今は見せられない。こんな…。
こんな涙でグシャグシャになった顔を…。
僕は別れの最後の最後に、親の優しさに気づいてしまった。だけどもう遅いんだ、何もかも…。
何て馬鹿な息子なんだ僕は…。
2
「あれ? もしかして結心じゃないの?」
「あ、本当だ」
涙でグシャグシャになりながらも、頑張って駅へ向っている途中、後ろから誰かに声をかけられた。
「誰?」
振り向くとそこには、どこか懐かしい二人が立っていた。
「ほらやっぱり」
「お久しぶり、結心お兄ちゃん」
え?この二人、まさか…。
「り、凛々? 愛華?」
「あ、分かるんだやっぱり」
「さっすが!」
矢作凛々
矢作愛華
この二人は、僕の双子の幼馴染で大切だった人。でもある事がキッカケで、その何もかもを失ってしまった。僕の中でずっと残り続ける後悔の要因になった人物。
「どうして…」
「どうしてって、ここ地元だから」
「あ、そうだった」
この二人は、まだ僕の家がお金持ちになる前からの幼馴染だから、ここが地元だから会うのは当たり前か…。
「目赤いけど大丈夫?」
「ちょっと色々あってね…」
「せっかくだから、家に来ない?今日お父さんもお母さんも居ないから」
「え?今から?」
「今からって、まだお昼だよ。お腹減ってるんじゃない?」
「まあ、減ってるけど…」
「じゃあ行こうよ、結心お兄ちゃん」
「え、あ、ちょっと」
僕は半ば強引に愛華(僕をお兄ちゃんと呼んでいる方)に無理やり引っ張られながら、十年ぶりぐらいかになる矢作家に向かう事になった。
まさか、二人と再会するなんて…。
                                                        第6章 完
                    第29話 取り戻せない時間 へ続く

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