桜舞う丘の上で

りょう

第27話 どちらを選んでも

                 第27話 どちらを選んでも

1
結局縁談の話を勝手に進められ、僕は自分の意志を伝えられずに、その日の話は終わってしまった。
「どうしよう…」
まだ残されていた自分の部屋に戻り、僕は思わずため息をついてしまった。今日何度目のため息だろうか…。
「何でゆりが…」
正直驚いている。僕の家とゆりの家が昔からの縁があったとは。もしかしたら、昔に一度会っているかもしれない。でもそんな事より…。
「このまま戻ったら、迷惑かけるよね…」
本当は一泊するつもりはなかった。すぐに言うだけ言って、帰る予定だった。でも、今は少し事情が違う。今帰ったら、ゆりの家やゆり自身に迷惑をかけてしまう。逆にこのまま残っていても、信じて待ってくれている桜やみんなに迷惑をかけてしまう。僕はどちらの道を選んでも、結局迷惑をかけるだけなんだ…。
……。
いや、違う。二つの道は似ているようで全く違う。桜島には僕の帰りを待っている人がいる。それを裏切って、この場に残っていいのか?それは僕の意志に反しているじゃないか。何もかも終わらす為に帰省した。それなのに、また元の生活に戻ってしまってどうするんだ。迷惑とか考えちゃいけないんだ。僕自身の意志を貫き通さなきゃ。
「そうだ、そうだよね…」
ここまで来て諦めるわけにはいかない!
2
翌朝、僕は今度は呼ばれたのではなく、自分の意志で父の部屋へと向かった。
「それで、話したい事は何だ?」
「僕は…自分の意志を伝えに来た」
「お前の意志? 」
「そうだよ」
「言ってみろ」
僕は一息を入れた後、ずっと言えていなかった一言を口にした。
「僕はもうこの家に帰ってこない。家出とかじゃなくて、もうお父さんとお母さんと縁を切って、桜島でずっと生活して行こうと思っている」
「お前何を言っているんだ?」
「そのままの意味だよ。僕はもうこの家に居たくない。お父さんやお母さんとはもう一緒に居たくない!」
「ふざけた事を言うな! お前は中村家の後継人として、一生暮らすんだぞ」
「それが嫌だって言ってるんだよ! 何で決められた人生を僕は生きていかなきゃいけないんだ! 僕には僕の人生があるんだ」
決められたレールの上を歩く人生なんてまっぴらごめんだ。僕には僕の人生がある。桜島のみんなと生きていく人生が…。
「お前の人生か…」
僕の決意が響いたのか、父親は僕に背中を向けて、何か考えはじめた。
「父さん?」
僕は思わず尋ねてしまう。しかし、返事が帰ってこない。
数分後
ようやく父親はが口を開いた。
「分かった」
「え?」
「もう俺や母さんは、お前の人生に何も言わない。お前はお前の人生を歩いていけ」
七月下旬の朝、この瞬間僕は親との縁を切る事に成功した。
「あ、ありがとう」
なのに、何でだろう…。
嬉しいはずなのに…。
心の底から喜べない…。
                  第28話 親の優しさと再会  へ続く

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