桜舞う丘の上で

りょう

第21話 新しく芽生えた感情

             第21話 新しく芽生えた感情

1
昨日全く眠れなかった僕は、眠気覚まし朝からランニングをしていた。
(体育祭終わったらするつもりなかったけど、癖がついちゃったな)
体育祭から一ヶ月近く経った今でも運動は欠かさずにいる。一度始めると、中々やめられないらしい。
(それにしても…)
走りながら昨日の事を思い出してみる。まさかあそこまで、心臓がドキドキするとは思っていなかった。
(あれだけ緊張しちゃうって事は…)
今まで味わったことのないこの気持ち。それが何を示しているのか、僕は分かっていた。
そう僕は…。
いつの間にか桜を好きになっていたんだ…。
2
「ゆーちゃん」
少し休憩がてらに堤防に腰掛けて、朝の海を眺めていると後ろから声がした。
「あれ?こんな朝に会うなんて珍しいじゃん」
その声の主が誰だかすぐに分かり、振り返りながら僕はそう言った。
「おはようございます。ゆーちゃん」
「おはよう、ゆり」
そこに居たのはゆりだった。彼女とは夜の運動の時によく会うが、こんな朝に会うのは初めてだった。
「今日はちょっと早起きだったんで、散歩していたんですよ」
「そうなんだ」
ゆりが隣に腰掛けながら言う。
「でも今日は桜ちゃんが居ませんけど、どうしたんですか?」
「桜はまだ爆睡中。それに、朝は基本来ないよ」
「あ、そうなんですか」
何故か笑顔になるゆり。え?何で笑顔?
「これで…にもチャン…が…」
そして何かを呟いてるけど、何を言ってるんだ?チャンスって聞こえた気がするけど…。
「まあ、それはいいです。」
「あ、いいんだ」
「それよりも私ゆーちゃんに聞きたいことがあるんですけど」
「聞きたい事?」
「はい」
何だろうか?僕に答えられる範囲なら答えるけど…。
「ゆーちゃんは今好きな人は居ますか?」
無理でした。
3
結局ゆりの質問には答えず帰宅。今日は日曜日なので学校は休み。もう一回寝ようかな…。
「あ、おかえりゆーちゃん」
「ただいま」
やっぱりやめよう。
「今日も朝から運動?」
「うん。ちょっと眠れなかったから」
「何で?」
「何でって…」
原因の大半は桜なんだけど、僕はとりあえず誤魔化す事にした。
「昨日桜が寝ちゃった後、新作パンを考えたら結構過ぎちゃって」
「あ、そうなんだ。でもそれって、私が原因だよね、ごめん」
「あ、謝らなくていいよ」
謝られても正直困る。彼女が原因のように見えて、原因じゃないんだから。
「そう?」
「う、うん」
僕の胸に新しく感情が芽生えた朝は、こうして終わっていく。この後彼女や友人部一同と過ごす夏休みに、期待を膨らませながら…。
ただその前に、僕にある事件が発生するとはこの時思いもしなかった。
                                         第22話 電話 へ続く 

「桜舞う丘の上で」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「その他」の人気作品

コメント

コメントを書く