桜舞う丘の上で

りょう

第18話 前へ歩き出す勇気を 前編

           第18話 前へ歩き出す勇気を 前編

1
という訳で無事に保健室からの脱出に成功。
「何か和樹が可哀想に思えるんだけど、私」
「まあ、仕方ないよ」
保健室にはベッドが一つしかない。その為複数の患者を同時に休ませる事は出来なくなる。そこで僕より症状が重い患者が運ばれてきたらどうなるだろうか?優先されるのは後者で、症状が軽い僕は保健室から出される。この方法で何とか脱出する事に成功したのだ。まあ、和樹には熱中症患者として運びこまれた人として、犠牲になってもらったんだけど…。
「とにかくこれで一件落着って事だし、いいじゃん」
「うーん、そうなのかな?」
桜はまだ疑問に思っているらしいが、これも彼女のため。だから仕方ない、うん。
「その肝心の彼女が来なきゃ意味ないけどね」
「大丈夫、きっと来てくれるよ」
彼女にとって学校は嫌な思い出しかない。でも僕は、彼女にそれを乗り越えて欲しいと思っている。あの場所から逃げて桜島へやって来た僕が言える台詞じゃないかもしれないけど、誰かが前に歩き出せずにいるなら僕はそれを助けてあげたい。自分みたいな人間にならないように…。
「リレーはいつだっけ?」
「この次の次よ」
「え! もうそんなに近いの?」
「当たり前でしょ。午後の部はそんなに多くないんだし」
次の次となるとあと十分くらいだろうか?
「ちょっと不安になってきた」
「ゆーちゃんが信じないでどうするの!」
「って言われても…」
時間がない。やっぱり僕じゃあ無理なのかな…。と、思っていると…。
「何の話ししてるの結心君」
後ろから聞き覚えのある声が聞こえた。
「え?」
慌てて振り向く。そこには声の主、前へ歩き出す勇気がひつような人、僕が今勇気を与えたい人、加奈がいた。
「加奈!」
2
「よかった、来てくれたんだ」
「うん。私結心君が頑張る姿が見たいから、来ちゃった」
車イスを漕ぎながらやって来る加奈。僕と桜は彼女の方に寄っていった。
「結心君の隣に居るあなたは、昨日影でずっと話を聞いてた人?」
「え? もしかしてばれてた?」
「結心君からは見えなかったけど、私にはずっと丸見えだったよ」
「そんなぁ」
「いや、隠れる気なかったじゃん桜。実際、僕に全部聞いていたって話していたし」
「まあ、そうだけど…」
と、まあ雑談はここら辺にして。
「放送かかったし、そろそろ行こうか」
「うん」
「あ、いってらしゃい。二人とも」
放送がかかったので、僕達は集合場所に向かう。
「結心君、頑張ってきてね。私、ずっと見てるから」
加奈の応援の言葉に背中を押されながら…。
       第19話 前へ歩き出す勇気を 後編 へ続く

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