桜舞う丘の上で

りょう

第14話 癒えていない傷

                    第14話 癒えていない傷

1
加奈と別れ、帰ろうとした所で一人の気配に気付いた。
「何だ桜、話聞いてたの?」
「うん」
堤防に腰掛けて海を眺めている桜がそこには居た。そうか、聞かれてたんだ…。
「ゆーちゃんがそんな傷を抱えているなんて、私びっくりしちゃった」
「まあ、初めて聞いた人は誰だってびっくりするよ」
僕はその隣に腰掛けた。
「あの子が歩けなくなった理由が、こんなに辛い物だって、私信じられなかったな」
「それは僕もだよ。でもそれと同時に、彼女を放っておけなくなったんだよね」
「それってやっぱり、自分と似てるから?」
「それもあるけど…」
もし彼女を救ったら、僕自身も救われるんじゃないかって思った。未だに癒えてない心の傷、それを少しでも癒す事ができればいいんじゃないかって…。
「あるけど?」
「いや、何でもないや」
だけどその事を他の人に話したくはない。話した所で、何にも報われないと思っているから。加奈は話してくれたけど、僕は少し違うんだ…。
「とにかく、明日は本番だから早く帰ろう。私眠くなってきたし」
「そうだね」
桜が歩き始めたので、僕はそれを追う。
いつしか桜や友人部に僕の事を話す時がくるかもしれない。その時みんなは、どんな反応をするのだろうか?まあ、今は全く想像がつかないんだけど…。
2
その日の晩、僕は週に何度も見る同じ夢を見た。
『結心、何をやっているのよ。遅刻するわよ』
『今いぐ‥がら‥やめて‥』
『お姉ちゃん、そんなに引っ張ったら、結心お兄ちゃんが死んじゃうよ』
『あら』
それは最近までそばにいてくれた幼馴染との記憶。
僕が一生後悔をする出来事が起きるキッカケとなった、幼馴染との記憶。
ただそれらの記憶は、明るくて‥
『ほら、さっさと行くわよ』
暖かくて‥
『レッツゴー』
この後起きる事件を全く感じさせない記憶‥僕の楽しかったあの頃の記憶の夢を、僕は何度も見ている…
『どうして…結心…』
3
「またあの夢‥か‥」
僕はその夢を見る度に、夜中に目を覚ましてしまう。勿論その後、うまく寝付けるはずもない‥。
(明日のコンディション、最悪かも‥)
僕は心に大きな不安を抱えながらも、ひたすら夜が明けるのを待った。
いよいよ体育祭が幕を開ける…
                                                          第3章 完
            第15話 体育祭の朝 最悪の朝 へ続く

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