桜舞う丘の上で

りょう

第12話 前夜の訪問者

                     第12話 前夜の訪問者

1
その感情は次の日の学校でも続いていた。
「ゆーちゃん、足早くなりましたね。」
「うん。でも、何か今日様子が変よね。」
「確かにな。俺も変だと思った。」
3人の会話が聞こえる。確かに今日の僕は少し変だ。イライラしているっていうか、何というか・・。
(今日は部室に行かないで帰ろう・・。)
こんな感情的になったのは、人生ではじめてだろう。誰かの為にこんな感情的になるなんて・・。
でも、その理由は簡単なんだ・・。
彼女と僕は似ている気がする・・。
2
家に戻っても何もやる気が起きず、時間だけが過ぎていきすっかり夜になっていた。
「はぁ・・。」
勿論運動をする気なんて起きやしない。
コンコン
ボーッと天井を眺めていると誰かが扉をノックしてきた。桜かな?
「はい。」
「結心さん、お客さんですよ。」
尋ねてきたのは夏海さん(桜の母親)だった。こんな時間に客だなんて誰だろう。
部屋を出て僕は外に出てみた。
「あれ?どうしたの加奈?」
外にいたのはわざわざ車イスでやって来た加奈だった。そして隣には桜がいた。
「桜までどうして?」
「買い物帰りに彼女に会って、ゆーちゃんはどこに住んでいるか聞かれたから、案内してあげたの。彼女、ゆーちゃんがに話があるんだって。」
「僕に?」
「うん。」
3
加奈を引き連れてやって来たのは、いつもの海岸。
「相変わらず景色がいいね。ここ。」
「そうでしょ。私本当に好きなんだここ。」
「へぇ。」
波の音を聞きながら答える僕。ああ、心地よいなここ。
「それで話って何?」
そんな事思いながらも、肝心の話を忘れない様に彼女に尋ねる。
「あ、そうだったね・・。」
しばらくの間沈黙だけが流れ、波の音しか聞こえない中で加奈は口を開いた。
「昨日の話なんだけど、結心君は何であんなに怒っていたのか、私にはさっぱり分からなかったんだけど、どうしてなの?」
「やっぱりその話だよね・・。」
確かに昨日の僕の怒りっぷりは異常だった。でもそれは・・。
「あなたには全く関係のない話なのに、どうしてあんなに感情的になったの?」
「その話が僕にとって、関係のある話だからだよ。」
「え?それって・・。」
僕と彼女は似たような境遇で生きてきたと感じたから・・。
                                         第13話 代償 へ続く

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