桜舞う丘の上で

りょう

第9話 パン屋「チェリーブロッサム」

       第9話 パン屋「チェリーブロッサム」

1
「という訳で、今日からお前にはここで働いてもらうぞ。」
「はい。よろしくお願いします。」
宮崎家での生活が始まって1週間が経ったある日の日曜日、秋久さん(桜の父親)の指導のもと、人生で初めてのアルバイトが始まった。まあ、最初は店番なんだけど・・。
(というかこのパン屋、本当に売れているのかな。)
レジで店内を眺めながら、ふとそう思ってしまう。店内はいたって普通のパン屋なんだけど、棚に並んでいるパンがどうみても・・。
(あれって、パンと言えるのかな?)
何か七色に光ってるパンがあるけど、どうやって作ったんだろう。名前も「ナナヒカリ」って・・。そのままだし、米の名前に似てないか?
(暇だな~。)
店番始めてかれこれ1時間は経つけど、客は1人も来ていない。大丈夫なの?このパン屋。
2
で、更に1時間後・・。
「何だゆりか・・。」
「客に対してその接し方は、失礼だと思います!」
ようやく客が来たかと思ったら、来たのはゆりだった。ガッカリ。
「ガッカリされる理由がイマイチ分からないんですけど、私は。」
まあ、一応客だからちゃんと接するけどね。
「お客様、当店のオススメ『ナナヒカリ』を買ってみてはいかがでしょうか?」
試しにナナヒカリをオススメしてみる。
「明らかに怪しいので買いません。」
ですよねぇ。
「ではこちらの、オクトパンはいかがでしょうか?」
「うまい事言ってるように見えますけどそれ明らかにパンにタコを挟んだだけですよね?」
「いいえ。これはイカです。」
「まさかのイカですか?どうみてもタコですけど。しかもそれじゃあ、名前の意味がないですよね?」
「いちいちうるさいお客様ですね。」
「何で怒ってるんですか?」
その後10分程粘ったけど、普通のパンだけ買って、お帰りになりました。
3
「へぇ、ゆり買いにきたんだ。」
「うん。」
その日の晩、また桜が部屋を訪ねてきた。ちなみに彼女は今日、部屋にこもって一度も出てこなかった。何してたのかな・・。
「変なパン売ったりしなかった?」
「変なパンだって自覚はあるんだね。よし、今すぐ撤去しよう。」
「ち、ちょっと。やめてよ。」
立ち上がってあれらのパンを全て排除しようと向かうと、桜に止められた。
「何で止めるの?」
「当たり前でしょ。何でそんな事しようとするのよ。」
「いやいや、あれがあるから客が来ないんだと思うんだけど。」
「事実でもそれは言わないでよ・・。」
どうやら彼女も理解してるらしい。だったら尚更なんだけどな・・。
「これは新メニューを僕が考えた方がいいかも・・。」
パン屋「チェリーブロッサム」
僕はとんでもない所でアルバイトを始めてしまったらしい。
                                                           第2章 完
                            第10話 車イスの少女へ続く

「桜舞う丘の上で」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「その他」の人気作品

コメント

コメントを書く