桜舞う丘の上で

りょう

第2話 たった一時間で変わる気持ち

        第2話 たった一時間で変わる気持ち

放課後僕は、昼に勝手に決められた通り、友人部三人と一緒に桜島を回っていた。
「あら桜ちゃん。今日は何しに来たのかしら?」
「おばさん、こんにちわ。今日は新入部員の歓迎会をと思って…」
「まあ、新人さん?すごいわね」
はずだったのだけれど、一時間ほど回った後、小さな食堂に来ていた。部活に入るという前提に話されるのは、正直困るんだけど・・。
「ほら、座れよ」
「あ、うん…」
本当はこの場で帰りたかったのだけれど、どうも帰れそうな雰囲気じゃなかったから、仕方なく和樹(さっき勝手に自己紹介してきた)に勧められるまま席に着く。
「今日は和樹のおごりだから、結心君は沢山食べてね」
「はぁ? 俺がいつおごるって言った?」
「さっきよ」
「言ってないからな。勝手に捏造するなよ」
「捏造じゃないわ。証人がここに居るわ」
「ワタシハ、チャントキイタワ」
「誰だよお前!」
「ワタシハ、ユリロイドデス」
「何だよそれ!」
何か三人で喧嘩をしてるけどそこは無視。一時間一緒に居たら流石に慣れてしまった。何てくだらないんだろう・・。
(あれ?不思議だな…)
ここに入るまではあんなに帰りたかったのに、今このやりとりを眺めてたら帰る気が無くなってしまった。
「とにかく、俺はおごらねえ」
「えー、今日誰も財布を持ってきてないよ」
「じゃあ何で来たんだよ」
「おごってもらうため」
「まさかのおごり前提かよ」
「ワーイ、オゴリダオゴリダ」
「お前はもういい」
たった一時間、くだらない喧嘩を見ていただけなのに、僕は三人と一緒に居たいと感じてしまった。本当にたった一時間の間なのに…。
「なあ結心、何か言ってくれよ」
「え? 僕?」
突然話を振られ、一瞬戸惑ったけど…。
「二人とももうちょっと考えてなよ」
「そうだそうだ」
「ここじゃなくてもっと高い店でおごってもらった方が得じゃん」
「そうだそうだ・・って、違うわ!」
ごく自然に返す事が出来てしまった。僕は一時間で…。
「それなら私、いい店知ってる。そこに行こう」
「賛成!」
「行かねえからな」
この三人の輪の中に入っていた。初めて出来た友達の輪の中に…。
                                  第3話「ブカツ」へ続く

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