他称改造人間になった俺

チョーカー

本当の戦いはこれからだ!

 その男は圧倒的だった。
 三人掛りの飛び交う弾丸を躱し、暴れるだけ暴れた。
 今の状態は、みゆき 桜花 野見の三人は狭い部屋の中に身を潜ませ、銃で牽制している。
 対照的に男は部屋の真ん中を陣取り、仁王立ちで威圧している。
 この膠着状態から10分ほど経過し、男は声を上げた。
 「俺の名前は九郷用 俺の二つ名は知ってるか?」
 久郷の質問に答えたのは桜花だった。
 「無血の久郷 意味は、いろいろと聞いてますね。
 闘争において血を流したことがない。
 鮮やかに戦い返り血を浴びたことがない。
 熱血でも冷血でもなく、感情にぶれる事がない。
 最後は違うようですが」
 この状況でも桜花は苦笑しながら説明し終えた。
 「まぁ、俺の無血は無血開城の無血だけどな」
 男・・・。久郷の言葉にみんな反応が遅れたようだった。
 敵地に現れ、暴れるだけ暴れておいて無血開城とは真反対としか思えない。
 「おまいら憮然とした顔してるな。ほれ、証拠だよ。出てみろよ」
 いつの間に携帯電話を手にしており、桜花に向かって軽く投げた。
  携帯電話は誰かに繋がってるらしく、桜花が耳に当てる。その反応は意外なものだった。
 『えぇ・・・。いえ、そんな・・・。 わかりました』
 携帯電話を切り、桜花は久郷に投げ返した。 その表情こそ、憮然と言っていいものだろう。その表情はみゆきと野見にも感染していた。
 「言っただろ?俺の無血は無血開城だと。俺が本当に得意なのは腹芸と寝技なのさ」
 肩をすくめて言う久郷に対して、桜花は口を開いた。
 「上からの電話だった。 手打ちが成立した。記憶喪失の男は自由にさせろ」
 「・・・」
 自由と言われても・・・
 「あんた、俺と一緒にこないか?」
 思いがけない久郷用の言葉だった。 
 「最初に言ったが、俺達は悪の組織ってわけじゃない。あいつらの組織とは敵対しているが、見解の相違で争ってるだけだ。記憶を取り戻したいだけなら、俺たちの方が都合はいいぞ」
 息を飲んだのは俺だけではなく、久郷以外の全員だった。
 「ぶちゃけて言うと、将軍とドクの遺作って事で興味があるってのが理由だが、なんか面白そうな予感がするんだよ。お前からな」
 まるで値踏みをするように見ながら、手を差し出してきた。
 みゆきは何か言いたそうな顔をしている。
 桜花は諦めたようにそっぽを向いてる。
 野見はグラサンで表情がわかりにくい。
 これの返答で俺の人生が変わる分岐点なのは間違いないだろう・・・

 

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